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『グオオアァ…!!!』 「はああッ…!」 察知する赤竜が、ルーを敵と見なし狙いを定める。 …が、一瞬早くルーの氷の刃が解き放たれ、鮮やかにも全弾命中させていた。 まともに魔法を食らう竜は、絶叫してバランスを崩し。たたらを踏みながら数歩、後退していく。 (すご、い…) これが加護を得た守護騎士の実力。 その威力も然ることながら、青白い光を纏うルーの神々しい姿に。 つい心、奪われてしまう。 「赤竜が怯んでいるぞ…!!」 騎士達の歓声が上がり、止まることなく疾走するルーをじっと見上げる。 息も切らさずに駆ける様は、本当に頼もしくて…。 (神子の…ううん、オレだけの騎士なんだ…) その腕に包まれる安心感からか、不謹慎にもときめいてしまったり。 だってスゴくカッコいいんだもん、ルー… これがオレの恋人だなんて。未だに夢なんじゃないかって…思っちゃうよ。 「面白くなってきた…よねぇ?」 「ふんっ…」 ルーの魔法で怯んだ竜を目にし、今度はロロが不敵に笑うと。 ルナーは悔しげに鼻を鳴らして。 しかし次には、怪しげにほくそ笑んでるから… 「…まだまだ、こっからだよ!!」 ロロと一定の距離を取るルナーは、何やら術を唱え出し。その様子をジーナもコナーと戦いながら、ちらと視界に入れる。と… 「アイツ、何をする気だ…?」 「余所見してんなよ…!」 嫌な予感が過ったジーナは、ルナーを注視するも…。コナーを相手にしながらでは儘ならず、様子を伺うことしか出来なかったが…。 「上位種なら、少しは役に立ってよね!」 ルナーが赤い竜の頭部に向け、魔法を放てば。 それは当たる寸前で、花火のように音を立てて爆発する。 驚いた竜は、ブルブルと仕切りに首を振っていたのだけど… 『ギィアアア…!!!』 「な……退避だ!皆、一旦下がれ!!」 ルナーの魔法によって正気を失ったのか、怒り狂う赤竜は突然暴れ出し。 先程の火球ブレスを、形振り構わず乱打し始めた。 「チッ…余計なことしやがって…」 「ヒャハハ!ルナーのヤツ、やるじゃんか!」 一連を見ていたコナーは嬉々としてはしゃぎ、 ジーナは舌打ちして吐き捨てる。 しかし───… 「うああっ…!!」 ところ構わず吐き出されるブレスは、脆くなった城や花壇を無差別に破壊していき。 庭園内に聳え立つ物見櫓にも、見事に命中してしまう。 すると石造りのそれは、勢い良く崩壊して───… 「────…クソッ!!」 櫓の真下には不運にも、怪我をして動けなくなってしまった騎士と、その人を庇おうとする騎士の姿があり…。 考えるよりも先にジーナは駆け出していた。 あまりの反射速度に、目の前のコナーも殆ど身動きが取れないでいる。

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