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⑧
「ジーナ…!」
既に城目前まで来ていたオレ達では、どうすることも出来ず。オレはルーに抱えられたまま、堪らず悲鳴を上げたけれど───…
「ジーナ!!」
「行かせない!お前の相手は…ボクだろっ!」
崩壊していく櫓に突っ込ん行った相方を、ロロも追おうとするのだが…。それは叶わず、ルナーによって阻まれてしまう。
その間にも櫓は、轟音を響かせ崩れ落ちていき…
立ち込める粉塵を見つめ、ロロは悔しげに奥歯を噛み締める。
オレ達もまた皆で目を凝らし、固唾を飲んでいると───…
「ジーナっ…ジーナ…!!」
「落ち着くんだ、セツ…」
竜は未だに暴れてはいるが、それはヴィン達騎士団が抑えてくれているから、まだ良かったけど…。
瓦礫の下敷きになってしまったジーナ達が気掛かりで。オレは蒼白になりながら、飛び出そうとするも…ルーに腕を捕まれ、止められてしまった。
居ても立ってもいられず、何度も叫んで呼び掛けていたら…
「へっ…こんくらいで守護騎士が、くたばるわけにはいかねんだよ…」
『ジーナ…!!』
思わず叫んだら、ロロと被ってしまったけど。
崩落した櫓から立ち昇った真っ赤な炎柱。
その中心には、傷だらけながらも堂々たる笑顔を湛えたジーナの姿が…あって。
彼の足元には、先程の騎士さん達…こちらもどうやら無事だったみたいだ。
安堵したからか、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚に苛まれる。
「ジーナ…」
どうやらジーナは突撃する際、炎を身体に纏わせ、それを盾代わりにしたようで。
無事ではあるものの、あちこちから血を流していたから…その程度は遠巻きからでも判るほど。
オレは無意識に治癒魔法を───…と、ジーナのもとへ一歩踏み出そうとしたのだけれど。
「来んじゃねぇぞ、セツ!!」
「っ…!」
威嚇するみたくオレを制するジーナの声に、ビクリと思わず肩を揺らす。
でも、なんでっ…。
「お前はルー達と先に行ってろ!!」
「そんなっ…!」
額から滴る血を乱雑に拭うジーナに、オレは反論するけれど。
困惑していると…ジーナはニヤリと口角を上げ、
悪戯に笑ってみせて。
「コイツらは、俺がまとめてブッ潰しとくからよ…」
プラプラと軽く手を振るジーナは、身を翻し続ける。
「安心しな、すぐに片付けて…追い付いてやっから。」
待ってろって…いつになく大人びた声音で宣言してみせるジーナの背中は、とても大きく見えて。
「解った…待ってるからな…!」
ロロもヴィンも騎士団のみんなも、どうか無事で…。
目が合ったふたりもまたジーナ同様、頼もしいまでに頷てくれたから。
「…行こう、セツ。」
「うん…!」
この場は仲間に任せて。
シロエさん達にも見送られながら…
オレはルーとアシュ、そしてオリバーさんと共に。魔王城の…ジークリッドの待つ王の間へと急いだ。
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