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「ジーナ…!」 既に城目前まで来ていたオレ達では、どうすることも出来ず。オレはルーに抱えられたまま、堪らず悲鳴を上げたけれど───… 「ジーナ!!」 「行かせない!お前の相手は…ボクだろっ!」 崩壊していく櫓に突っ込ん行った相方を、ロロも追おうとするのだが…。それは叶わず、ルナーによって阻まれてしまう。 その間にも櫓は、轟音を響かせ崩れ落ちていき… 立ち込める粉塵を見つめ、ロロは悔しげに奥歯を噛み締める。 オレ達もまた皆で目を凝らし、固唾を飲んでいると───… 「ジーナっ…ジーナ…!!」 「落ち着くんだ、セツ…」 竜は未だに暴れてはいるが、それはヴィン達騎士団が抑えてくれているから、まだ良かったけど…。 瓦礫の下敷きになってしまったジーナ達が気掛かりで。オレは蒼白になりながら、飛び出そうとするも…ルーに腕を捕まれ、止められてしまった。 居ても立ってもいられず、何度も叫んで呼び掛けていたら… 「へっ…こんくらいで守護騎士が、くたばるわけにはいかねんだよ…」 『ジーナ…!!』 思わず叫んだら、ロロと被ってしまったけど。 崩落した櫓から立ち昇った真っ赤な炎柱。 その中心には、傷だらけながらも堂々たる笑顔を湛えたジーナの姿が…あって。 彼の足元には、先程の騎士さん達…こちらもどうやら無事だったみたいだ。 安堵したからか、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚に苛まれる。 「ジーナ…」 どうやらジーナは突撃する際、炎を身体に纏わせ、それを盾代わりにしたようで。 無事ではあるものの、あちこちから血を流していたから…その程度は遠巻きからでも判るほど。 オレは無意識に治癒魔法を───…と、ジーナのもとへ一歩踏み出そうとしたのだけれど。 「来んじゃねぇぞ、セツ!!」 「っ…!」 威嚇するみたくオレを制するジーナの声に、ビクリと思わず肩を揺らす。 でも、なんでっ…。 「お前はルー達と先に行ってろ!!」 「そんなっ…!」 額から滴る血を乱雑に拭うジーナに、オレは反論するけれど。 困惑していると…ジーナはニヤリと口角を上げ、 悪戯に笑ってみせて。 「コイツらは、俺がまとめてブッ潰しとくからよ…」 プラプラと軽く手を振るジーナは、身を翻し続ける。 「安心しな、すぐに片付けて…追い付いてやっから。」 待ってろって…いつになく大人びた声音で宣言してみせるジーナの背中は、とても大きく見えて。 「解った…待ってるからな…!」 ロロもヴィンも騎士団のみんなも、どうか無事で…。 目が合ったふたりもまたジーナ同様、頼もしいまでに頷てくれたから。 「…行こう、セツ。」 「うん…!」 この場は仲間に任せて。 シロエさん達にも見送られながら… オレはルーとアシュ、そしてオリバーさんと共に。魔王城の…ジークリッドの待つ王の間へと急いだ。

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