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ep. 35 大地の騎士と黄金の騎士①
「うわ…」
一歩、魔王城内へと足を踏み入れた瞬間。
纏う空気が…ガラリと一変する。
その異様な気配に胸騒ぎを覚え、つい声が漏れた。
「追っては…来ないようだな…。」
広いホールの中央まで来て、入り口を振り返るルーは。辺りを見渡すと、少しだけ警戒を緩める。
「これは魔王とやらの気配か?何かの魔法のようだが…相当な魔力だ。これでは外の魔物や魔族達は、おいそれと入って来れないのかもしれないな。」
オリバーさんが推察するように、城内はジークリッドの魔力で満ちており。
聖域内には殆ど存在しない瘴気が、そこかしこに充満しているから…。
「ジークリッドが王の間にいるなら、結界は完全に破壊されたと見て間違いなさそうだね…。」
「うん…神子の結界の気配も、全く感じないし…」
即ち魔族にとって、より有利な環境になってしまったということ。
この先にはラルゴや…まだ姿を見せていない、ティンカだっているだろうから。充分気を引き締めてかなきゃ…。
「ジーナ達は、大丈夫かな…。」
扉のすぐ向こうでは、みんなが戦っているはずなのに。何故かその喧騒どころか…外部からの音は、何ひとつ聞こえては来なくって。
信じて先に進んではみたものの…ルナーにコナー、魔族の援軍に加え、あんなに大きな竜だっているし。やっぱり不安は否めないから…。
ジーナ達を危惧して、しんみりと項垂れていると…
それを見兼ねたルーが、ぽんと頭を撫でてくれて。少しだけ見上げたら…穏やかに微笑み掛けられる。
「ジーナなら心配要らない。ロロやヴィン、それに騎士団だっている。」
皆神子に仕えることを胸に、今日まで努力を重ねてきた屈強なる騎士なのだから。
「この程度で倒れはしないから。信じて欲しい。」
「うん…。」
仲間を想うルーの目には、一切の迷いも感じられず。
なんというか、そういう男の友情…のような深い繋がりが。ちょっとだけ羨ましく思えたり。
「ふふ…ジーナだって、あんな大見得切ってしまったからねぇ。セツの前ではカッコ付けてたいんだよ、きっと。」
期待してあげてよって、和ませようとするアシュもそう。
同じ時を過ごしてはいても、オレは神子で…
みんなは騎士だから。
守る側と守られる側…立場的にも、やっぱり違うのかなっていうか。お互い同じ志を持つ騎士の、信頼関係があるからさ。
ルーもいつの間にかアシュと打ち解けてるし。
告白以降…あんなに険悪ムード醸し出してたオリバーさんとだって、一切の蟠りが無くなったもんね。
なんだかんだ色々あったけれど…
今ほどみんなを、心強いと思うことはないよ。
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