367 / 423

「しかしルーファス、先程の技…やはり神子の加護とやらの力なのか?」 「あれはセツが扱う魔法と、同じような性質だったよね。」 辺りに気を配りながら、オリバーさんとアシュがちらりとルーに視線を向けて。 「そうだ、さっきの魔法…」 言われてオレも思い返す。 元から相当な実力者だってのは、知っていたけど… 竜を怯ませた技は、騎士団のみんなも驚いてたくらいだからね。 「ルーがあんなことまで出来るなんてさ…ほんとスゴかったよね!」 オレを抱えて走りながら、瞬時にあれほどの威力の魔法を発動させるだなんて。 最初の火の球から守ってくれた時も、そうだけど。 今はもう、その光りも消えてしまってはいたが… ルーはオレの反応に対して、さらりと答えてみせた。 「いや、あれは私も初めてで…」 「え、そうなの?」 無意識によるものだからと、曖昧に苦笑するルーは。自身も確かめるよう手を見つめ、思い耽る。 「咄嗟だったからな…セツを護らねば、と…。」 そうしたら身体が勝手に動いていたんだと、ルーは照れ臭そうに微笑んだ。 「そっか…」 神子が与える力はスゴイもんなんだと、散々聞かされてきたし…ある程度は知っていたけど。 中でも加護っていうのは特別で、本当に奇跡なんだなぁと…実感する。 だからこっちに来てすぐの頃から、神子と交われば不死身になるだのとか…色んな噂に振り回されたりもしたもんだが…。 そりゃ力付くでも奪いたくはなるよねって…話なわけで。 まさに今、魔王がその恩恵を狙ってるわけだけど…。 (ルーを選んで良かった…この力があれば、ルーだって傷付かなくてすむかもしれないもんね…) 神子の力は悪用させちゃいけない。 この力は、大切なものを守るためにあるんだから。 「セツのためか…まさに愛の力ってヤツだねぇ。」 「えっ…!?」 「はは、ならばルーファスは無敵だろうな。」 アシュが冷やかすから、オリバーさんまで笑ってるし。更には… 「これはセツのおかげだ。」 「違うよっ…加護っていうのは、ルーが持ってる本来の力を引き出すためのものだし…」 そう、だからルーが強いからこそ、加護が活きるわけで。そこに神子の扱う神聖な属性が加えられたっていう…。 だからオレは、きっかけを作っただけに過ぎないのだけど。それでもルーは、 「セツが私に与えてくれた、特別なものだからな…。」 ありがとうって…よりキラキラと輝く微笑みで以て。オレを虜にするのだ。 「こちらこそっ、助けてもらったし…ルー、スッゴくカッコ良かったし…」 思わず魅とれてしまい。モジモジしながら、ふたりの世界に浸りそうになっていると…。 「ハイハーイ、良い雰囲気のところ申し訳ないけど。そろそろ行くよ~!」 ヴィンがいないからね~と、手を打って容赦なく場をブッた切るアシュに…ハッと我に返らされる。 真っ赤になり慌ててルーから離れたら、オリバーさんに苦笑いされてしまったが…。 とにかくここは、気を取り直して進まなくちゃ!

ともだちにシェアしよう!