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⑤
「お前には…感謝している。」
両手に剣を構え、徐にオリバーさんが口を開く。
その表情までは見えなかったけれど…
「守護騎士に選ばれなかった私を。こうして…この瞬間に、立ち会わせてくれたのだからな。」
その声音は、今から戦うとは思えないほど清々しく。
いつもの大人びた彼とは一変して。
まるで無邪気に胸踊らせる、少年のような響きを思わせるから。
「ふ…俺はただ、楽しみたいだけだ。」
ラルゴもまた、同じように。悪戯な笑みを湛えていた。
「騎士なんざ、お堅い輩の集まりだと思ってたんだがな…。お前も実は同族なんじゃねぇの?」
売られた喧嘩に、負ける気なんか更々無いだろ?と、ラルゴが皮肉混じりに問えば。
「…否定はしない。」
オリバーさんは今だけ騎士ではなく、ひとりの男として…不敵に応えてみせた。
「…………」
対峙するふたりは互いを探り合うかのよう、微動だにせず。暫くの間、沈黙と睨み合いが続いていたが───
「…そういうわけだから、俺の邪魔だけはすんじゃねぇぞ、ティンカ。」
視線は逸らさず、ぽつりとラルゴは告げて。
「…解ってるよ。」
ラルゴの巨体に隠れ気付かなかったが…その背後には、見知った人影があり。
影は気配も無く、ゆっくりと死角から姿を現す。
(ティンカ…)
以前会った時とは違い、これが本来の姿なのか…
透き通る肌と、金糸の長髪の美しさは変わらず。
けれど耳は長く尖り、エメラルド色だったはずの瞳は赤暗く、感情の光をほとんど伴わない。
「僕は神子さえいなくなれば、良いから────」
ラルゴの背後に佇むティンカの瞳だけが、オレを映し捕らえて。
「…───ね?」
「っ…!」
まるで金縛りのように動けないでいたら。
誰もいないはずの背後から、いきなり殺気めいた感情が押し寄せ、
咄嗟に振り返るけれど────
「おっと。」
反応出来ないオレの腕は、間一髪ルーに寄って引かれ…背後に迫る殺意は、割って入ったアシュの守護魔法によって防がれた。
ラルゴの近くにいたはずのティンカは、何故か目の前におり…悔しげに、アシュを睨み付けている。
「君の相手なら、この僕がしてあげるよ?」
綺麗なコは大歓迎だよと、にっこり微笑むアシュだけど。
その内には、いつもの穏やかさ見受けられず…
訝しむティンカは、不快げに舌打ちを漏らしながら。後退りするようアシュと距離を取った。
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