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⑦
「どうした、もっとガンガン来いよ!」
「ならば…遠慮なく。」
しかしすぐ隣では、オリバーさん達の戦闘が白熱し始め。
広いと云えど建物内、強大な力のぶつかり合いは、それを揺るがす程の勢いだったから…。
ルーがいなければ、オレなんてすぐ巻き込まれてしまいそうだ。
「ここじゃ騒がしくて、落ち着かない…」
ティンカも同じことを思ったのか、うんざりしたよう吐き捨てると。
ゆっくりと、アシュを手招きするよう片手を前に掲げて。次に呪文のようなものを発したかと思えば…
パチンッと軽快に指を鳴らす。
「アシュ…!」
その音が耳鳴りのように響いたかと思えば、
アシュとティンカの周辺だけが、グニャリと不自然に歪み始めて。
ふたりの身体が、闇の中へと飲み込まれていくもんだから。
港やジークと対面した時のことを思い出し、
無意識にアシュの元へ駆け寄ろうとしたのだけど…。
「ルー。」
先程のようにアシュがルーを呼べば。
オレの行く手は、やはりその腕に遮られてしまい。
「セツのこと、頼んだよ。このコは僕が留めておくからね。」
敢えてオレではなく、ルーにだけ視線を送り。
受け止めるルーも、交わすそれだけで全てを察した後…ちらりとオレを見やると。
「…ああ。」
短く一言だけで応えて。
認めたアシュはいつもの調子でじゃあねって、軽く手を振りながら…
ティンカと共に闇へと溶け込み、
その場から一瞬にして消えてしまった。
「アシュレイ…」
その様子を遠巻きに把握したオリバーさんも、
消える寸前に、此方へ向かおうとはしていたけど…
「おい。」
ラルゴが放った一撃を受け、足止めを食らっていた。
「タイマンだろ?野暮な真似すんじゃねぇよ。」
「くッ…!」
斧を剣で受け止め、鍔迫り合いに。ラルゴが不敵に笑み忠告する。
重そうなそれを、なんとか弾き返すオリバーさんもまた。間合いを取りながらニヤリと笑い返して。
「そうだな…彼には要らぬ心配だった。」
水を差してすまないと謝罪しながら。
オリバーさんの目は、わざと挑発するよう不敵に細められていた。
「人間なんざ、クソつまんねぇ生き物だと…馬鹿にしてたんだがな。」
戦斧を振り回しながら、まるで世間話でもするかのよう淡々と話すラルゴ。
オリバーさんも涼しげな顔で以て、繰り出される攻撃を軽々と受け流していく。
「お前みてぇなヤツは特にな…けどよ。意外と嫌いじゃねぇだろ?」
こういう…強い相手を前にした瞬間に、昂る衝動が。
「否定はしない…が、私は神子に仕える身。そう勝手の出来る身ではないからな。」
あっさりと肯定しながらも、あくまで己を律し…
騎士の本分を弁えるオリバーさん。
「はっ…忠誠心とやらか、難儀なもんだな。」
「私とて、譲れぬものがあるからな。」
呆れ口調で嘆息するラルゴにも、さらりと真顔で返していた。
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