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「はっ…俺には理解出来ねぇな。」 魔族にありがちな性分として好戦的で破壊的、優劣の基準も至ってシンプルに。強い者が絶対であり、弱者はそれに屈するのが当然だと。 魔族らしからぬように見えて、やはり自分はそれが道理であると説くラルゴ。 それ故に、強い騎士が脆弱な神子に対し。そこまで執着する意味が解らないというのだが…。 「そうか?」 オリバーさんはそうは思わないと告げる。 「お前は、ジークリッドのに服従しているから此処にいるというのか?」 「あ…?」 ならば…双子やティンカは? 魔族は馴れ合わないと謳いながら、そこにある繋がりは何であるのかと。 …もしかしたら、オリバーさんはラルゴが抱いている特別な感情にも。何かしら、気が付いているのかもしれない。 「魔族も人間もない、お前にも守りたい者が在るからこそ…今、戦っているのではないのか?」 「………」 金属が競り合う音だけが鈍く響き。 ラルゴは黙ったまま、オリバーさんを凝視する。 「少なくとも、お前が理由の無い衝動だけで…行動するとは思えないがな。」 「はっ…」 戦斧で勢い良く大剣を弾き、離れるラルゴは。 一瞬何か思い耽るかのよう、伏し目がちに笑むと。 「ああ、そうだな。そうかもしれねぇな…。」 何処か吹っ切れたように、オリバーさんの言葉を呑み込んでいた。 「どうだ?譲れぬもの、だったろう?」 「…負けるのは性に合わねぇんだよ。」 此処は魔王城。 魔族と人間が決着をつけるために、オレ達はこの場に集っている。 勿論、敗者側に明るい未来などは無くて… なのにオリバーさんもラルゴも、なんて無邪気に笑うのだろう。 「行けよ、神子。お前も…ジークが待ちくたびれてるぜ。」 ふたりの遣り取りを、遠目から見守っていたオレ達に。ラルゴは目もくれず言い放つ。 一瞬躊躇うオレは、ルーとオリバーさんを見やるけれど… 「心配は無用、私も皆と共に直ぐ参りますから。」 「はっ、言ってくれるじゃねぇか。」 オリバーさんもまた、視線はラルゴを捉えたまま。 しかしその声には迷いなど微塵も感じさせないから。 「オリバー殿、御武運を…。」 「ルーファス、お前もな。」 ルーはオリバーさんと一言交わすと… オレの手を引いて、真っ直ぐ中庭の出口へと赴いた。 「これで気兼ね無く、暴れられんだろう?」 「お前もな…。」 扉が閉じる寸前、そんな会話が聞こえてきたけれど。 オレは決して振り返らず、次には扉越しに。 開戦を知らしめる金属音が重々しく轟き渡った。

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