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⑨
「…………」
少しだけ前を行くルーの背中を導 に、王の間を目指して廊下を進む。
ルーはオレの手を引きながら、緊迫した空気を張り巡らせていた。一言も喋らず、ただ黙々と先へ進んで行く。
ジーナもロロもヴィンも、アシュもオリバーさんも誰もいなくて。今尚、戦っているはずなのに…怖いくらい此処は静かで。
物音ひとつ耳に届いてはこないから。
不安はただただ増していくばかりだった。
折れそうなこの心を支えているのは、
今は…この背中だけ。
二人分の足音が、余計に動揺を煽ってくるけれど…。なんとか平常心を保とうとして、手の温もりを強く握り締めた。
…すると、更に強い力が。オレのそれを優しく包み込む。
「不安か…?」
「…ん、でも…」
平気。ルーがいてくれるなら…振り返る気配に釣られ見上げたら、ルーは静かに微笑んで。
「皆の事は…気になるだろうが、心配は要らない。必ず来ると約束しただろう?それまでは私が、セツを護り抜いてみせるから。」
そう、みんなと約束したからと。
ルーはオレを気遣うよう、悪戯に笑ってみせる。
…らしくないくせに、優しいんだルーは。
「うん…ありがと。」
みんなの事は心配でしょうがないけど。
ここまで来たらもう、先に進むしかないんだし…。
一抹の不安を抱きつつも、ルーに励まされたオレは。もう一度だけ、縋るように…手を強く握った。
「とりあえず2階へ上がろう。その方が、いざと言う時に効率が良いから。」
中庭を出てすぐの場所からも、王の間へと通じる扉があるにはあるんだけど…。そこは敢えてスルーして、2階に上がるための階段の方を辿って行く。
真っ直ぐその扉から王の間を目指す方が、最短ではあるらしいのだが…。
そこからだと王の間へと上がるためには、屋外に面した階段を上がらなければならず…。
すぐ真下には断崖絶壁が控え、万が一奇襲を受けた場合危険を伴うから。
ルーひとりで、オレというお荷物を守らなきゃいけないことを考えれば。より堅実な方を…というわけである。
「あ…」
薄暗く静寂な城内を慎重に進み、階段を抜けて行くと。急に屋外の明かりが差し込んできて、つい目を細める。
視界を庇う指の隙間から、建物の奥に繋がる渡り廊下の先に、塔のようなものが見えたから…。
あれが王の間、なんだろうか?
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