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⑫
「────で、気が付いたら外に弾き出されちゃってねぇ…ご覧の通り、この場所まで飛ばされたというわけだよ。」
ちょっと頑張り過ぎたかな~なんて、軽く笑って流そうとするけど。
アシュの腕や脇腹の怪我はかなり深く、出血も酷いし…治癒を施すオレからすれば、笑ってなんていられない状態だった。
「そういう事、だったのだな…」
「オリバーさん!…それに、」
ルーとふたりでアシュの話を聞いていると。
オレ達が辿って来た階段の方から、オリバーさんの声が聞こえて。
顔を上げると、そこには…
「よぉ!みんな無事か~?」
「ジーナ!ロロにヴィンもっ…」
「えへへ…ごめんねセツ、遅くなっちゃって。」
心配を他所に、陽気に手を振る年少組と、
安堵したよう溜め息を溢すヴィンの姿があった。
「オリバー殿、ラルゴは…」
「それなんだが…」
見たところ怪我はしているものの、致命的なものは見当たらず。みんな元気そうで、オレはとりあえず胸を撫で下ろす。
けれどルーに問われたオリバーさんは、口元に手を宛てて…思案しつつも、ぽつりと答える。
「あの男はやはり、なかなかの強者でな…それでもなんとか、互角には戦えていたんだが…。」
どちらも譲らず、平行線のまま。
満身創痍での勝負を繰り広げていたけれど…
『強ぇな、お前。やっぱ俺の見立て通りだよ。』
鍔迫り合いにもお構い無しに、嬉々として話し掛けてくるラルゴは。しかし…と声音を低くする。
『魔法、使えんだろ?遠慮せず、本気で来いよ。』
コイツは遊びじゃねぇんだと、冷ややかに言い放つ。確かに…以前ラルゴはあまり魔法が得意ではないのだと、言っていたような気がするが…。
問われたオリバーさんは、然して気にも留めず。
『“真剣”勝負だろう?お前も遠慮しないなら、私も出し惜しみはしないが。』
あくまで騎士として、正々堂々たる姿勢を貫く意思を示した。
その物言いは、わざと煽るように告げたそうだが…
ラルゴは苦笑して。
『は…嫌味な野郎だ。俺なんざ相手にならねぇってか?』
『そうではない。だが…敵ではあれど、こういうのも悪くはないと思っただけだ。』
まさか魔族とこんな形で剣を交えることになるとは、思いもよらなかったが。
そう返すオリバーさんも、笑っていた。
『ホント変わってんな。しかし俺ものんびりしてるわけにはいかねぇんだ。』
だから遊びは終わりにして、そろそろ決着をつけよう───告げてラルゴは笑顔を消し、戦斧を構える。
『挑むところだ。』
オリバーさんも両手の大剣を握り締め。
ふたりは同時に地を蹴った。
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