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⑭
「…そういうことならティンカと共に、この先で会えるかもしれないね。」
治療を終えたアシュが立ち上がり、手櫛で前髪を掻き上げる。
「すみません、セツ殿…私までお手を煩わせてしまい…」
「いえいえ、そこまで酷い怪我じゃなかったですから。」
話を聞きながら、オリバーさんとジーナの怪我も治療していく。
そういえばジーナ達は、あの後どうなったんだろう?
竜もまだ倒したわけじゃなかったし。
魔族もいたから、心配だったんだけど…。
「竜は騎士団みんなで、ぶっ倒したよ。双子はゴタゴタしてる間に、まぁた逃げられちまったけどな…。」
赤竜を召喚した魔族も制圧し…ジーナとロロとヴィンは、オレ達の元へ向かうよう騎士団から促され。今に至るのだと説明する。
本来なら、もう少し戦況が落ち着いてから戦線離脱したかったらしいけど。自分達は神子と共に戦えないからと諭され、抜けて来たのだそうだ。
「そっか…とにかく、みんな無事で良かったよ。」
やっぱりみんな揃ってる方が落ち着くよね。
ルーだって今は内心ホッとしたように、表情が幾分か和らいでるし…。
絆っていうか仲間っていうか…
なんだかんだ、頼りにしてるんだろうな。
「…で、ジークリッドは、彼処 にいるんだよね?」
ロロが示す先を、皆が仰ぎ見る。
言わなくてもきっと、みんな気付いてると思う。
だって王の間の方から、オレにでも判るくらいに…魔王の気配が漂っているからだ。
まるで早く来いよとでも、云わんばかりに…。
『……………』
先程までの穏やかな空気は消え去り、変わって緊張の波が押し寄せて。オレもルー達も口を閉ざし、それぞれ物想いに耽っていたが…
徐に、オリバーさんが口を開く。
「行けるか?…ルーファス。」
真剣な声音に、思わず彼を仰ぎ…
すぐさま隣のルーへと、視線を送る。
「セツ殿の加護を受けた身とは云え、一度は敗れ…命をも脅かされた相手。城の結界も破壊されたとなれば、魔王の力も以前の比ではないだろう。」
一歩踏み入れば、フェレスティナの命運を掛けた戦いが…ルーを待ち構えている。
だからこそオリバーさんは、覚悟を見極めるために。敢えて厳しい言葉で以て、訊ねてるんだろうけど…。
(ルー…)
オリバーさんの言葉を受け止めるルーの眼差しは、真っ直ぐ彼を捉えており。複雑な想いを抱えるオレは、ざわつく胸をギュッと押さえ込む。
ルーの強さは理解してる、だから信じてないわけじゃない。
それでも万が一の…あの悲劇が、頭を過るから…。
ルーがジークリッドと戦うことに対し、躊躇う自分がいるのも確かだった。
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