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②
「そうだ神子、お前の名は?」
「えっ…」
思い出したようジークリッドに問われ、あからさま萎縮するオレは。
相変わらずその意図が読めず、戸惑いもあったんだけど…。
「……セツ。」
ジークリッドからは、悪意のようなものが感じられなかったため。
言い淀みながらも、おずおずと名乗れば…
「セツ…お前は必ず、俺のモノにしてやるよ。」
皮肉にも妖艶で美しく、獣のような眼をギラつかせて。ジークリッドは不敵にそう…宣言してみせた。
途端に過去の記憶が蘇り、恐怖心に駆られる。
なのに囚われた獲物の如く、ジークリッドの視線を外せずにいたら…
「セツ。」
震える手を、ルーのそれが包み。強く握られる。
ハッとして、すぐにルーを見上げたら。
「お前は必ず、私が護ってみせるから。」
大丈夫だって、穏やかでいて強かな眼差しが告げるから。
オレの不安はあっという間に振り払われ…
自然と身体の震えも止まっていた。
「はっ、とんだ自信じゃねぇか。なら…前よりもっと楽しませてくれるってことだよな?」
拳を打って慣らし、ニヤリとジークが笑うと。
「お前に負けるつもりなど、二度と…無いからな。」
ルーもスラリと剣を抜き放つ。
その姿からは、目に見えてしまいそうなほどの気迫で満ち溢れており。
対するジークリッドもまた、掴み処のない様子とはいえ。何処か真剣味をその目に宿し…
「同感だ…あんなみっともねぇ思いは、俺も二度とゴメンだからな。」
以前と同じよう、両手に魔力の刃を纏わせた。
(大丈夫、信じてる…)
また失うかもしれない恐怖に、
今すぐこの場から逃げ出したくもなるけれど。
ルーは独り、その身を賭して。
フェレスティナのため…オレのためにと、魔王にすら挑もうとしているんだから。
オレが最後まで見届けなくちゃ…
ううん、オレがルーの傍にいたいから。
(どうか…)
祈るよう、両手で胸元をぎゅっと掴む。
オレに出来ることなんて何もないから。
せめてルーが傷付かないように、と…。
最大の試練へと対峙する、愛おしいあの背中に向け。
ひたすらに、オレはその身の無事を願った。
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