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③
「セツ、ここは危険だから。少し離れていよう。」
「うんっ…」
アシュに促され、オレ達は入り口の方へと少し下がり。向かい合うルーとジークリッドの対決を見守る。
玉座側では、ラルゴと双子が静かに傍観していた。
先程ジークリッド達が話していたように、
ティンカの姿が見えないのは、気掛かりだったが…。
「神子の力、手に入れたんだな。なら…お前はセツと番ったてことか?」
「…………」
態とらしく、下卑た物言いで挑発してきたジークリッドだが。ルーは冷ややかに睨むだけで、無言を貫いている。
それを肯定と捉えたのかは判らないけど…
ジークリッドは、目を細めながら鼻で嘲笑った。
───…と、
「…!」
「ふはっ!良い反応じゃねぇか、面白ぇ。」
何も見えなかった。気付いたらルーがジークリッドの手刀を剣で受け止めており…。
圧倒する光景に気圧され、思わず息を飲み込む。
「コイツは…是が非でも手に入れたくなったな。」
剣に弾き返される反動のまま、後方へ飛ぶジークがオレを見やると。ルーは冷淡な怒りを滲ませて。
「させるか…セツは誰にも渡さない。」
長剣を手に、今度は自らが打って出る。
これも早すぎて、オレの肉眼では殆ど追えきれないのだけれど…。
瞬く間に距離を詰め、放たれた一撃は。
鈍い音を響かせ───しかし、ジークの手刀で以て惜しくも凌がれてしまった。
それだけでは止まらず、ルーは追撃に転じる。
「神子を独り占めか…涼しい見た目の割に、貪欲なんだな。」
「私が慕うのは神子に関係無く、セツだからこそだ。」
愛するが故だと言い切るルーを、
呆れたよう笑い飛ばすジークリッドは。
「それこそ綺麗事だな…所詮は下心だろうがよ!」
そう吠え、剣擊を力任せに全て弾いていく。
ルーは仰け反り倒れそうになったが…片手を付き側転すると、鮮やかに体制を建て直してみせた。
一方ジークは、高く舞い上がるよう後転すると、
「欲しいもんはな…力ずくで奪うもんなんだよ!」
手に纏わせていた魔力の刃を、ルーに向け苦無のように投げ放った。黒光りする刃は途中で分散し、猛スピードで襲い掛かってくる。
「やれるものなら、やってみろ…!」
キィン…と小気味良い音を立て、ルーは次々と黒い刃を弾いていくも。無数に別つ刃は更に細く、到達する直前で針のように分散したものだから…。
完全には防ぎ切れず、被弾してルーの身体を小さく切り刻んだ。
「ルー…!」
走る鮮血に、堪らずオレは悲鳴を上げてしまったけれど…。ルーは大して気に止めた様子も無く、苦痛で相貌を崩すことすらなかった。
少し取り乱したオレの肩を、
ロロが宥めるよう、手を添えてくれる。
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