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④
「大丈夫。だってルーにはお前が…勝利の神子様が、付いてんだからな。」
「ジーナ…」
視線はルーから反らすことなく、ジーナが告げる。
ふと見渡すと、ヴィンもアシュもオリバーさんも…
みんな真剣な眼差しで、この戦いの行く末をじっと見届けていたから…。
オレなんかが動揺して、ルーの足枷にはならないようにしなきゃ…。
声を漏らさないよう、唇を固く結びルーの姿を追う。
攻撃を食らったとはいえ、上手く凌いでいたからか。受けた傷は、さほど酷いものではないようで…とりあえずは胸を撫で下ろす。
この間にも二人は広い建物内を駆け、攻防を繰り広げており。どちらも譲らず、素人目には五分五分の戦いぶりに思えるんだけど…
まだまだルーもジークリッドも、実力を出し切っていないように感じた。
「こっからだぜ…!」
「同じ技など…」
休む暇無く、ジークが先程の苦無で畳み掛ける。
数と質量が増した黒い刃は、ジークが手を払った瞬間、一斉に発射されて。
ルーは王の間を駆け抜け、回避を試みたが───
「逃がすかよ…!」
「っ……!」
ジークの合図で、刃は意思を持って軌道を変え。
それらは弾丸のような速さで、ルーを追撃し続けるものだから。
オレは内心ハラハラしながら、それを見守った。
「ならば…」
ルーが更に加速し…そこで何を思ったのか、城の壁際へと方向転換。自らを、袋小路へと誘う。
もしかするとまた、あの刃を剣で防ごうというのだろうか…?でも今度の刃は、量も威力も前のより数段上だろうから…
どう考えても、無謀としか思えなかったけど───…
「っ…!」
しかしルーは速度を緩めることなく、壁のギリギリまで走り─────刹那、その身に風を纏わせ軽やかに床を蹴ったかと思うと…
壁を利用して数歩上へと駆け上がり、高く跳躍して。そのままふわりと宙返りしてみせた。
「それじゃあ避けらんねぇぜ!」
「全て消せば良いだけだ…」
宙を舞ったまま両手に剣を握り締め、下段で構えると。刀身に輝く金色の風が、吸い込まれるよう集まっていき…
魔力を纏うそれを、ルーは未だ自身へと向かって来る刃へ向け、力強く凪払う。
すると風は鋭い衝撃波となり、一迅の風を巻き起こして…黒い刃を、悉く粉砕してみせるのだった。
「やるな…」
「…この力は、私だけのものではない。」
高揚と苛立ちを滲ませ、ジークは笑うが。
反してルーは静かに着地し、心乱す様子もなく淡々と述べる。
「すげぇな、ルーのヤツ…。俺、アイツに今まで一度も勝ったことねぇのにさ…」
成り行きを見つめるジーナが、歯痒そうに呟きながら……拳を握り締める。
「前とは比べものにならないね…これが、歴代の神子が騎士に与えてきたって言う、加護の力…なんだね。」
ジーナの言葉に釣られ、ロロも前を見据えたまま頷いて。
年長組の3人は、固い表情を崩すことなく。
沈黙のまま、ルー達の姿を目に焼き付けていた。
「神子の加護が凄いわけじゃないよ。これはルーが内に秘めていたもので…オレはそれを、引き出しただけに過ぎないから…。」
根も葉もない噂や伝承は様々だったけれど。
加護による力は、誰しもが手に出来るわけじゃなく…。本来はきっと、神子が愛し…認めた者のみに授けられるものだから。
本当に凄いのは、神子じゃなくてルー自身なんだ。
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