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「ラルゴやティンカ…あんなメチャクチャしてたルナーとコナーだって。君のことを家族みたいに、大切に想ってるし…。」 やり方は暴力的で我が儘で独り善がり。 そこに関しては、さすがに共感は出来ないけど。 「仲間を…好きな人を守りたいっていう気持ちだけは、人も魔族もおんなじだなって。オレは思ったから…。」 永い歴史の中で、彼らがどのようにして対立してきたかは正直分からない。 だからオレの考え方は、誰にも理解して貰えないかもしれない。それでも… 「…とんだ甘ちゃんだな。神子が魔族の治療をするだとか、聞いたことがねぇよ…。」 ジークリッドが、呆れたように苦笑うから。 少しは…歩み寄れたんじゃ、ないだろうか。 「俺を生かしてどうすんだ?魔族なんざ、信用出来ねぇだろ。」 またお前を襲うかもしれないのに。 ジークリッドは態と脅すような口振りで問う。 「ここでトドメを刺さなかったことを、後悔しても…」 「それは無いだろう?」 畳み掛けるようなジークリッドの言葉を遮ったのは、ルーで。 横たわるまま…魔王は視線だけを、声のした方へと向ける。 「はぁ?何を根拠に…」 「そのような愚劣な行為を、お前が好むとは思えないからな。」 先程まで本気でやり合ってた相手を前に、さらりと言ってのけるルーファスを。ジークリッドは訝しげに眉を顰めるも…。 ルーは至って真剣な顔付きで続ける。 「それこそ生き恥を晒すくらいなら、潔く死んだ方がマシだと考えるような────…違うのか?」 含んだ笑みを向けるルーを目の当たりに、ジークリッドは一瞬驚いてみせたが… 「知ったような口を…まあ、否定はしねぇけどな…」 『ジーク…!!』 あっさりと認めてしまい、双子達からは不満げな声が上がった。 「まさか、このまま手を引くってこと?魔族ばっか悪者扱いして…人間だって信用出来ないだろっ!」 「神子を生かせば、魔族はどんどん日陰に追いやられて…それこそ人間の思うツボじゃないかっ!」 ルナーもコナーも、ジークリッドの考えには賛同し兼ねるとばかりに猛反発する。 しかし魔王の心は既に決まっているようで…。 その揺るがぬ瞳を前に、双子達も結局は押し黙ってしまった。 「キミらが約束してくれるなら…オレとしては、こんな不毛な戦い、早く終わって欲しいし…。」 「セツは本当にいいの?魔族を簡単に信用なんかしてさ…」 平和的な道を模索するオレだけど、双子が言ってることも当然であって…。 それは人間側とて然り、ロロも不安を口にする。 と… 「俺は正直反対だ。魔族は信じらんねぇし…。例え騎士道精神に反してるって言われても、ここできっちりカタを付けるべきだ。」 「…そうだね。フェレスティナのことを考えるなら、ジーナの考えは正しいと思うよ…。」 現実的な選択肢を突き付けておきながら、冴えない表情を浮かべるジーナ。 魔族は敵、そう理解していても… 心の何処かでは、まだ迷っているのかもしれない。

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