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⑭
「なあ、セツ。」
最後に振り向いたジークリッドが、ニヤリと意味ありげに声を掛けてきて。
「そこの騎士…ルーファスに飽きたら、俺んとこに来いよ。たっぷり可愛がってやるからさ。」
「ふぇっ…?かわっ…」
「お前なら、いつでも嫁として歓迎するぜ?」
またからかってんのかな~って思ったんだけど…。
ジークリッドは至って本気なようで。
笑いながらも真剣で熱っぽい視線を。オレへと注いでくるものだから…。
「いやいや…オレが男だって知ってんだろ…」
今までの神子が女の子だったから、混同してんのかもだけど。
…と、なんだか照れ臭くなり、上手く流そうとしたんだけども。
「ん?上位の魔族に、男も女も関係ねぇぞ?その気になればガキだって…」
「はぁ?…ええっ!?」
こんな別れ際で衝撃の事実をブッ込まれ、開いた口は塞がらない始末。
だからといって、ジークリッドの誘いを受ける気なんて、更々無かったけど─────
「いやいや、それでも遠慮しと───わわっ…!」
突然、腕を強く引っ張られ。
「るっ、ルー…?」
すとんとルーファスの胸に納められたかと思えば、ぎゅぎゅっと抱き締められてしまい。
更に…
「セツは誰にも渡さない。」
「ッ…!!」
ムッと不機嫌を露にしながら。
きっぱりと告げるルーの姿に、ドキドキせずにはいられなかったという…。
「ふっ…精々、愛想尽かされねぇようにな。」
挑発するよう、ルーを一瞥したジークリッドは。
ラルゴの支える腕を外し、背中を向け軽く手を振ると…しっかりとした足取りで行ってしまった。
ひとり残されたラルゴは、その背を見送った後、一度オレを振り返ると。
「神子…世話になったな。」
すまなかったと、巨漢には不釣り合いな優しい眼差しを向けると…
彼もまた、玉座の奥、バルコニーから勢い良く飛び立つと。吹き抜ける風のよう…一瞬にして消えていくのだった。
しばらくの間、別れの余韻に静寂が流れる。
「何処か義理堅い男でしたね、ラルゴは…。」
剣を交えたオリバーさんは、感慨深げにぽつりと溢し。
「そう…ですね…。」
オレも様々な想いを馳せ…
彼らが去って行った方を見つめながら、くすりと笑みを漏らす。
「敵とは云え…騎士に通ずるところが、ありましたしね。」
いつもはあまり感情的にはならないヴィンも。
ほっとしたよう、安堵の息を吐いていた。
みんなを振り返ると、同じように穏やかな笑顔で迎えてくれる。
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