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「よ~し!じゃあ、この勢いで結界もパパッと直しちゃおっかな~!」 ジークリッドとの因縁は無事に決着が付いたけども。 各地には修復されてない結界が、まだまだ残されてるんだし。むしろ、これからの方が大変なんだもんね。 だから手始めとして、魔王城を攻略しとこうじゃないかと、意気込んでみたのだけど…。 「身体は平気なのか、セツ?ジークリッドの傷は相当深かったし…立て続けに力を酷使しては、負担が大きいのではないか?」 ルーが心配するのも無理はない。 確かに、みんなの治癒に加えて瀕死のジークリッドも助けちゃったもんだから。体力的には、かなり消耗してるとは思うんだけどさ。 「平気だよ。なんていうか、ジークのことももう心配しなくて良いからさ…」 気持ちが楽になった分、今は疲れとか全然感じないんだよね~。ほら、もしかしたらさ。神子として更に成長したからかもしれないし? 「なんか調子も良いし。どうせやらなきゃなんだから、早めに片付けちゃおうよ。」 「しかしだな…」 いつになく高揚し、テンション高めなオレを。 ルーは訝しげに見下ろして。 「そう焦らずとも、時間はあるのですから。先ずは身体を休めてからでも、遅くはありませんよ?」 「そうだよ、セツ。僕達の怪我だって治してるんだし…無理は禁物だよ?」 ヴィンとアシュまでもが、気を遣ってくれるのは有難いんだけどね。 「大丈夫!今ならなんだって出来そうだし。むしろ元気過ぎて有り余ってるくらいだし~。」 無駄に調子づくオレはドンと構え。 みんなの制止も訊かず、そのまま結界の修復を強行したのだが… 「ほーら、言わんこっちゃねぇ~。」 「うう…面目ない…。」 神子の仕事はきっちりやり遂げたよ? だがしかし…案の定というか、オレは見事にヘバッてしまい。その場に倒れ込んでしまうという、体たらくなわけでして。 ジーナには呆れられ、返す言葉もなく… オレは床にガックリと手を付き項垂れた。 「もう~ムチャし過ぎだよ、セツ~。」 全然大丈夫じゃないでしょって、心配するロロが屈んでオレの背中をよしよしと擦ってくれる。 「う~…だってなんかイケそうな気がしたんだもん~。そりゃあ、ちょっとは調子に乗り過ぎたかもだけどさぁ…。」 重たくなった頭を擡げ、へにゃりと笑顔を取り繕ってみても。みんなの目は誤魔化せないようで。 …や、ほんと反省してるってば…。 「外の様子も気掛かりだが…暫く休んでから戻ろうか?」 膝を付き提案するルーは、相変わらずオレを甘やかし。優しく頭を撫でてくれる。 しかし外にいる騎士さん達を長々と待たせるのも、申し訳ないからなぁ…。 「ん~…じゃあ、ルーが抱っこしてってくれる?」 「…!セツ…」 恥ずかしがるのも、なんだか今更な気がして。 怠さも手伝い、遠慮なしにルーの首に腕を伸ばす。 勿論、みんなの視線は犇々と感じてはいたが… 「おやおや、随分と見せ付けてくれるねぇ~。」 アシュが態とらしく苦笑すれば、 「今くらい良いんじゃないか?セツ殿もルーファスも、肩の荷がひとつ下りたのだしな。」 オリバーさんも、笑ってそう話しているのが聞こえたから。ここは甘えさせて貰おうと思う。 「オリバーさんは、心が広いですねぇ。」 「ふ…お前の方こそ、だろう?」 その後は年長者ふたりで何やら話し込んでいて。 ヒソヒソやってたから、オレには聞こえなかったけど。 「ふふ…戻ったら、一緒に酒でも飲みましょうよ。」 「ああ、そうだな。宜しく頼む。」 「ならば私も同席させて下さい。」 ヴィンも加わり、年長組は酒の約束まで交わしていたので。 こうして絆を深められたことを考えれば… 悪いことばかりでもなかったんだなぁと、染々思えた。

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