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⑮
「よ~し!じゃあ、この勢いで結界もパパッと直しちゃおっかな~!」
ジークリッドとの因縁は無事に決着が付いたけども。
各地には修復されてない結界が、まだまだ残されてるんだし。むしろ、これからの方が大変なんだもんね。
だから手始めとして、魔王城を攻略しとこうじゃないかと、意気込んでみたのだけど…。
「身体は平気なのか、セツ?ジークリッドの傷は相当深かったし…立て続けに力を酷使しては、負担が大きいのではないか?」
ルーが心配するのも無理はない。
確かに、みんなの治癒に加えて瀕死のジークリッドも助けちゃったもんだから。体力的には、かなり消耗してるとは思うんだけどさ。
「平気だよ。なんていうか、ジークのことももう心配しなくて良いからさ…」
気持ちが楽になった分、今は疲れとか全然感じないんだよね~。ほら、もしかしたらさ。神子として更に成長したからかもしれないし?
「なんか調子も良いし。どうせやらなきゃなんだから、早めに片付けちゃおうよ。」
「しかしだな…」
いつになく高揚し、テンション高めなオレを。
ルーは訝しげに見下ろして。
「そう焦らずとも、時間はあるのですから。先ずは身体を休めてからでも、遅くはありませんよ?」
「そうだよ、セツ。僕達の怪我だって治してるんだし…無理は禁物だよ?」
ヴィンとアシュまでもが、気を遣ってくれるのは有難いんだけどね。
「大丈夫!今ならなんだって出来そうだし。むしろ元気過ぎて有り余ってるくらいだし~。」
無駄に調子づくオレはドンと構え。
みんなの制止も訊かず、そのまま結界の修復を強行したのだが…
「ほーら、言わんこっちゃねぇ~。」
「うう…面目ない…。」
神子の仕事はきっちりやり遂げたよ?
だがしかし…案の定というか、オレは見事にヘバッてしまい。その場に倒れ込んでしまうという、体たらくなわけでして。
ジーナには呆れられ、返す言葉もなく…
オレは床にガックリと手を付き項垂れた。
「もう~ムチャし過ぎだよ、セツ~。」
全然大丈夫じゃないでしょって、心配するロロが屈んでオレの背中をよしよしと擦ってくれる。
「う~…だってなんかイケそうな気がしたんだもん~。そりゃあ、ちょっとは調子に乗り過ぎたかもだけどさぁ…。」
重たくなった頭を擡げ、へにゃりと笑顔を取り繕ってみても。みんなの目は誤魔化せないようで。
…や、ほんと反省してるってば…。
「外の様子も気掛かりだが…暫く休んでから戻ろうか?」
膝を付き提案するルーは、相変わらずオレを甘やかし。優しく頭を撫でてくれる。
しかし外にいる騎士さん達を長々と待たせるのも、申し訳ないからなぁ…。
「ん~…じゃあ、ルーが抱っこしてってくれる?」
「…!セツ…」
恥ずかしがるのも、なんだか今更な気がして。
怠さも手伝い、遠慮なしにルーの首に腕を伸ばす。
勿論、みんなの視線は犇々と感じてはいたが…
「おやおや、随分と見せ付けてくれるねぇ~。」
アシュが態とらしく苦笑すれば、
「今くらい良いんじゃないか?セツ殿もルーファスも、肩の荷がひとつ下りたのだしな。」
オリバーさんも、笑ってそう話しているのが聞こえたから。ここは甘えさせて貰おうと思う。
「オリバーさんは、心が広いですねぇ。」
「ふ…お前の方こそ、だろう?」
その後は年長者ふたりで何やら話し込んでいて。
ヒソヒソやってたから、オレには聞こえなかったけど。
「ふふ…戻ったら、一緒に酒でも飲みましょうよ。」
「ああ、そうだな。宜しく頼む。」
「ならば私も同席させて下さい。」
ヴィンも加わり、年長組は酒の約束まで交わしていたので。
こうして絆を深められたことを考えれば…
悪いことばかりでもなかったんだなぁと、染々思えた。
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