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⑯
「ん…少し熱いな、セツ。魔力切れの症状が出ているのか…。」
「ふぇ…そおかな…?」
オレの身体を支えるルーが顔を覗き込み、頬へと触れてきて。ひんやりとして気持ち良いなぁとか思いながら、ぽやっとする視界で見上げていると。
傍で見ていたロロは、何か閃いたかのよう目を見開く。
「魔力切れ────…あ~…なら、応急処置しといた方が良いんじゃないかな~?」
なんとなく芝居掛かった声量で告げると、仲良く談笑していた年長組の3人も目敏く反応を示して…
「でしたら我々は先に、騎士団の元へと合流しましょうか。」
ヴィンがロロに向け目配せしたかと思えば、いそいそと皆を急かし始め。
「了解~。あ、セツとルーはゆっくり休んでから来ると良いから。」
「そうだな、その方がセツ殿の体調も安定するだろう。」
アシュとオリバーさんも、頷き合ってヴィンに従う。
「え?さすがにコイツらだけにすんのは、危険じゃねぇか?万が一ってこともあるし…」
一方ジーナだけは魔族や魔物の潜伏を警戒し、自分も残ると申し出たけれど…。
「ちょっとジーナ~、空気読んでよ~。」
「はぁ…?」
プンスコと不満を露にしたロロが、何やら耳打ちすれば。ジーナは慌てて掌を返してしまい…
「いや~悪ィ悪ィ、やっぱオレも先に戻るわ~。外の様子もスッゲェ気になるしな!」
ごゆっくり~だとか、バツが悪そうにしながらも。ジーナはみんなと連れ立って、王の間からそそくさと退散して行った。
ふたりきりで取り残され、急に辺りが静まり返る。
去り際、ルーがみんなに向かって、
「すまないな…。」
…と謝罪を口にしていたのに対し、ロロはニコニコしながら。
「逆に無理させちゃダメだよ~?」
…なんて言ってたのは、気になるところだが。
「無理って…────ああっ…!」
言葉の意味を察した瞬間、オレは真っ赤になりながらルーの顔を盗み見た。
…しかし既にオレを見下ろしていたルーと、ばっちり視線がぶつかってしまう。
「なんか、気を遣わせ…ちゃった?」
「まあ…な。」
これまでのことが嘘みたく静かな空間に、ふたりきり。
ふと我に返ると、なんだか気恥ずかしくなるというか…。妙に意識しちゃって、ドキドキしてきたんだけど…。
『……………』
思うところは沢山あるし、色々あり過ぎて既にお腹いっぱい胸いっぱいで。
けれど身体は疲労困憊、立ってることすら儘ならないほどフラフラだったから。
「えと…とりあえず、ルーの魔力…」
…貰ってもいい?
本音はそれだけじゃあないのだけど。
照れながらも袖を引いて、おねだりしてみたら。
「ああ…好きなだけ、与えよう。」
ルーは応えて、恍惚とした瞳で顔を近付けると…。
その唇から自身の魔力を甘いキスに絡め、注ぎ込んでくれた。
魔力切れの余韻か、はたまた口付けによるものかは解らないけれど…
ふわふわとした感覚に酔いしれながら。
ほんの束の間の時を、愛おしい人と共に。
今だけは、それ以外のしがらみも全て忘れて…
この身に刻み付けるように。堪能するのだ。
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