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「お!なんだよ、意外と早かったなぁ~?」 「うふふ…セツ、ルーもおかえり~。」 魔力を分けて貰ったことで、ある程度回復したのを見計らい。 …といっても、やっぱりルーに抱っこされてではあったものの、オレ達は魔王城の外へと移動して。 早速とはがりに、ジーナとロロから冷やかしの洗練を受けることとなった。 「もう少しゆっくりしてくれば良かったのに~。」 「…そういうワケにもいかないだろ~。もう、からかうなってば~!」 ちょっとだけ流されそうにはなってたけども。 まだ任務の途中でもあるわけだし、やらなきゃいけないことも沢山あるんだから…と、 そこは理性をフル稼働させ、耐えたわけですよ。 それに、あんまり遅くなると変な誤解とか噂をされ兼ねないからね。 まさにこんな風に───…と、目の前でニヤニヤする年少組に溜め息吐いていると。 オリバーさんが此方に気付き、やって来た。 「セツ殿、宜しいですか?」 「はいっ…」 オレの体調を伺いながらも。真剣な面持ちを向けてくるオリバーさんに釣られ、ぴしりと姿勢を正す。 「戻られたばかりで申し訳ないのですが…騎士達に、セツ殿から経緯を説明しては頂けないでしょうか?」 どうやらオレ達が戻るまで、事の詳細は伝えていなかったようで。オリバーさんが切り出すと、途端に騎士さん達の視線が集まり、緊張が走る。 「勿論、セツ殿ひとりに責任を押し付けるつもりはありません。ですが一度、神子として貴方の口から直々にお話頂けたらと…。」 オレの不安を汲み取るオリバーさんは、頼もしげに微笑んでくれて。 「…解りました。ちゃんと伝わるかは、分からないけど…。」 だからオレは、言いますと応え。 注目が集まる中、一歩前へと赴くと…みんなに向けて、おずおずと口を開いた。 「えと…ここまで一緒に戦ってくれて、本当にありがとうございます。オレは不甲斐ない神子ですけど…騎士団のみんなが守ってくれたから…とても心強かったです。」 人前で話ことは、いつまで経っても慣れるものではなく…。 たどたどしくはあるけれど、それでも緊張で掠れたりしないよう、精一杯声を張り上げる。 「魔王とのことですけど…オレは敢えて和解という道を選びました。」 そう切り出した瞬間、俄にざわめき始めた騎士さん達に。動揺してしまいそうになるのを堪え、ルー達を見やると…。 その眼差しが、大丈夫だからと背中を押してくれる。 「みんなは魔族のことを、良く思ってはいないかもしれないけど…。オレがこの目で見てきた彼らは、まんま教わってきたような残忍な種族ばかりとは、どうしても思えなくって…」 オレはまだ、魔族のほんの一部分しか知らないから。今すぐ判断するのは難しいだろう。けど、 「魔王を倒すっていう…みんなの期待を裏切る選択だとは充分理性してるし。こんな勝手なことしちゃって、許しては貰えないかもしれない。」 それでも、オレは。 「誰も傷付かないで済むのなら。例え甘ちゃんだって呆れられても…この決断に対して、オレは後悔してません。」 しんと静まり返り、オレの声に耳を傾ける騎士さん達。その間を、穏やかな風が通り過ぎて行く。 「だからどうか。こんなオレの願いでも、みんなに受け入れて貰えたらなって…そう、思ってます。」 一気に言い終えて、改めてみんなを見渡すと。 その表情はとても複雑に。かといって何か反発するでもなく…葛藤に生まれる沈黙が、オレへと突き刺さる。 「あっと…ごめんなさい、こんな不甲斐ない神子で…」 みんなには迷惑掛けっっぱなしだし。 勝手した挙げ句、こうした時にさえ気の訊いた演説すら出来ない神子だけど…。 若干場に飲まれ、弱気になっていたら… 「卑下する必要は無い。セツ以外に代わりとなる神子などいないのだから。私は…お前の守護騎士となれたこと、何より誇りに思う。」 一点の迷いも曇りもない眼で、高らかにルーがそう告げたなら。 「私も!騎士として、セツ殿に仕えることが出来て光栄に思います!」 「俺も俺も~!一生セツ殿に付いて行きますからね!」 例に習い続く、カナタさんとシロエさんを皮切りに。 他の騎士さん達も次々と賛同して…。 気付いたら、その場にいる全員が。 声を揃え…歓声を上げていた。

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