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ep. 37 こころ、かよう。①

「ふぇ~…目が回るぅ…」 「セツ、お疲れでしょうが、直ぐ次に参りますよ。」 魔族の脅威も退け…っていうと大袈裟な気もするが。魔王城の結界も無事に修復し、役目をひとつ果たして。 神子率いる、特級騎士団の遠征隊が国へ帰還したのも束の間。ゆっくり英気を養うどころの話ではなく… オレ達を待っていたのは、目まぐるしいほどの現実であった。 凱旋時、城下ではパレードの如く市民の皆さんから歓迎されはしたものの。 謁見の間にて、いざ事の顛末を説明すれば… 案の定お偉いさん方────特に貴族院側の人達が、ザワザワしちゃったもんで。 因みにアリシア様に関しては、宰相さんや元帥さん達も含め、拍子抜けするくらいあっさりと受け入れられてしまったので…。 こっちは問題無かったんだけどね…。 とはいえ反発を抑えるため、オレ達は弁明やら説得やら謁見だ会議だと…連日引っ張りだこ。 ようやく騒ぎも落ち着いたかと思ったら。 今度は神子と守護騎士、それから騎士団の功績を讃えるための凱旋式やら…パーティーなんかも開かれて。 過酷だった遠征中は、メチャクチャ大変だったけれど。戻ったら戻ったで、馴れない社交場には辟易するし…。 何が何だか考える余裕も無いまま。 帰還してから、既に10日もの時が経過していたのだ。 「ルー達は、どうしてるかなぁ~…」 パーティーや式典では、一緒に出席こそしたものの…ゆっくり話す暇も無く。守護騎士のみんなは各方面に赴き、奔走していることが多かったそうで…。 城下に戻ってから、ルーとまともに話せたのも。一言二言くらいなもの…だったから。 こんなに離れたことも無かった反動も手伝い… 寂しさのあまりソファに突っ伏したまま、ぽつりと溢せば。 ヴィンもさすがに不憫に思ったのか…珍しく慰めるよう頭を撫でてくれた。 「貴方も慣れないことばかりで、疲れたでしょう。良く頑張りましたね。」 「ん──…まあ、オレの場合は流されてただけだからなぁ。」 のんびりしたいだとか…言える状況じゃないのは、ある程度覚悟してたことだしね。 それでもヴィンは、いつになく優しく労ってくれる。 「ルー達も何とか落ち着いたようですし。明日から暫くは、屋敷でゆっくり出来ると思いますよ。」 皆も先に屋敷で待っているでしょうからと。 ヴィンに言われ、オレは勢い良く立ち上がった。 「さあ…帰りましょう、セツ。」 「うん!」 遠征帰還後は忙しくて、ずっと宮殿の客間に寝泊まりしてたからね…。やっと帰れるんだと思えば、疲れもどっかに吹き飛んでしまうというもの。 そうして逸る気持ちを抑え、ヴィンを急かしつつ帰路に向け宮殿内の廊下を歩いていると…。 「セツ殿、これから戻られるのですか?」 「アリシア様!…はい、やっと一息吐けそうです~。」 オレ以上に、多忙を極めているであろう女王様とばったり出会し。 ふにゃりと顔を綻ばせ答えると、アリシア様は苦笑しながらも労いの言葉を返してくれる。 一国の女王様とも、すっかり砕けた関係となってしまったが…そんな態度でも、オレのことを無礼者だと避難する人は、もういなかった。

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