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②
「魔族との和解を知らされた時は、少々驚いてしまいましたけれど…」
そんな発想は思いも寄らなかったって、言ってたっけ。でも…
「この世界では、中立である神子のセツ殿だからこそ。成し得た偉業であると…私は思いますから。どうぞ胸を張って下さいましね?」
「はい…」
実際、貴族院からは辛酸な意見が飛び交っており。
それを目の当たりにしている女王様だからこそ…
こうしてオレの心中を察し、励ましてくれている。
本来なら、一番にオレを避難していてもおかしくない立場なのにさ。
オレは改めて、この人が女王様で本当に良かったなって…痛感したんだ。
「また今後の方針も、決めていかねばなりませぬから。今暫くセツ殿には、ご助力して頂かねばなりませんが…束の間ではあれど、それまでは御身を休め…ご自愛下さいませ。」
オレの手を取り、ふわりと微笑むアリシア様に。
感謝を込めて深々と頭を下げる。
…が、アリシアは何故か手を離そうとはせず。
ニコニコと、笑顔で謎の圧を掛けてくるので…
(ルーファスともご無沙汰でしょう?今宵はゆ~っくりと、愛を深められますわね?)
「なっ…」
オレにこっそりと耳打ちする女王様の発言に。
思わず顔を赤らめる。
何気にヴィンには聞こえていたのか、目が合うと咳払いしながら目を逸らされてしまったが。
国のトップが、なんてハレンチなことをっ…
「其方の方も進展がございましたら是非っ!私のお茶会にて、詳細をお教え下さいね!!」
「ああ…ハイ…。」
もう嫌な予感しかしないんだけど…
お世話になってる一国の女王様の誘いを、断われるわけがないので。
顔を真っ赤に沸騰させながらも…
そこはイエスと応えるしかなかったのだ。
「いっそ開き直って、存分に惚気てみては如何ですか?」
「ばっ…そんなこと出来るわけないだろ~!」
女王様の奇行には耐性があるヴィンには、しれっとそう助言されたが。
お茶会については、とりあえず後回しにして…
別に女王様の言葉を鵜呑みにしてるわけじゃ、ないけど…
(やっと…)
こうしてみると、恋人同士になってからは色んなことがあり過ぎてさ。そういった時間を、じっくりと堪能したことがなかったなぁって…。
だからかな…ようやく人心地付けて、
改めて実感するというか。
意識しちゃって、浮き足立ってしまう。
何故なら…
(あの約束、は…)
いつに、なるんだろう?
もしかしたら、本当に今夜とかっ────…
そんなことばかりが頭を過り、悶々としながら。
忙しくなる心音と歩調をなんとか抑え…
オレはヴィンと一緒に、神子屋敷へ帰るのだった。
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