400 / 423

「魔族との和解を知らされた時は、少々驚いてしまいましたけれど…」 そんな発想は思いも寄らなかったって、言ってたっけ。でも… 「この世界では、中立である神子のセツ殿だからこそ。成し得た偉業であると…私は思いますから。どうぞ胸を張って下さいましね?」 「はい…」 実際、貴族院からは辛酸な意見が飛び交っており。 それを目の当たりにしている女王様だからこそ… こうしてオレの心中を察し、励ましてくれている。 本来なら、一番にオレを避難していてもおかしくない立場なのにさ。 オレは改めて、この人が女王様で本当に良かったなって…痛感したんだ。 「また今後の方針も、決めていかねばなりませぬから。今暫くセツ殿には、ご助力して頂かねばなりませんが…束の間ではあれど、それまでは御身を休め…ご自愛下さいませ。」 オレの手を取り、ふわりと微笑むアリシア様に。 感謝を込めて深々と頭を下げる。 …が、アリシアは何故か手を離そうとはせず。 ニコニコと、笑顔で謎の圧を掛けてくるので… (ルーファスともご無沙汰でしょう?今宵はゆ~っくりと、愛を深められますわね?) 「なっ…」 オレにこっそりと耳打ちする女王様の発言に。 思わず顔を赤らめる。 何気にヴィンには聞こえていたのか、目が合うと咳払いしながら目を逸らされてしまったが。 国のトップが、なんてハレンチなことをっ… 「其方の方も進展がございましたら是非っ!私のお茶会にて、詳細をお教え下さいね!!」 「ああ…ハイ…。」 もう嫌な予感しかしないんだけど… お世話になってる一国の女王様の誘いを、断われるわけがないので。 顔を真っ赤に沸騰させながらも… そこはイエスと応えるしかなかったのだ。 「いっそ開き直って、存分に惚気てみては如何ですか?」 「ばっ…そんなこと出来るわけないだろ~!」 女王様の奇行には耐性があるヴィンには、しれっとそう助言されたが。 お茶会については、とりあえず後回しにして… 別に女王様の言葉を鵜呑みにしてるわけじゃ、ないけど… (やっと…) こうしてみると、恋人同士になってからは色んなことがあり過ぎてさ。そういった時間を、じっくりと堪能したことがなかったなぁって…。 だからかな…ようやく人心地付けて、 改めて実感するというか。 意識しちゃって、浮き足立ってしまう。 何故なら… (約束、は…) いつに、なるんだろう? もしかしたら、本当に今夜とかっ────… そんなことばかりが頭を過り、悶々としながら。 忙しくなる心音と歩調をなんとか抑え… オレはヴィンと一緒に、神子屋敷へ帰るのだった。

ともだちにシェアしよう!