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「ルー、お疲れ様~!ほら、早く座りなよ。」 ロロに手招きされ、ルーがちらりとオレを見てから隣の席へと腰を下ろすと。 「セツ…なんだか久し振りだな。」 「うんっ…ルーも、元気してた?」 「ああ…私なら、このとおりだ。」 声を聞いただけで、ドキドキしてしまい。 返事も少し上擦っちゃったし…。 「少し(やつ)れたな…ちゃんと眠れていたか?」 もう随分慣れたはずなのに。 前触れも無く頬に触れられ…大袈裟なくらい、ビクンと身体が跳ね上がる。 気付いているのかは判らないけど… そんなオレを認めたルーは、一瞬目を細めたかと思うと…。 触れる頬を僅かに撫でるようにして、その手を離していった。 「ルーも飲んだらどうだい?ようやく落ち着いたんだしさ、少しくらい羽目を外しても構わないだろう?」 「そうだな…なら、少しだけ。」 それからは他愛ない話をしつつ、食事を楽しみ… ルーはアシュに勧められるまま、お酒を嗜んだりと。いつも通りの光景に収まったところで。 なんだろう…オレひとりが意識し過ぎなのかな… 拍子抜け、というのが本音なわけで。 ちょっとくらい、オレのこと構ってくれたっていいのにさ…アシュと仲良く話し込んじゃってるもんだから。 つい嫉妬しちゃう自分が情けなくて。 気分転換のつもりで… 「オレも今日くらいは、お酒飲んじゃおっかな~。」 なんて投げやりに溢したら、そういうとこだけはちゃんと聞かれてたようで…。 何故かルーだけでなく、みんなからも全力で阻止されてしまった。 自棄酒(やけざけ)も許されず、気分もすっかり沈んじゃったものだから。まだ早いけど、もう部屋に引き籠っちゃおうかなぁとか、独りモヤモヤしていたら… 「セツ…どうした?元気がないな…。」 「あっ…ルー…」 いつの間にやら、隣の席に戻って来ていたルーに声を掛けられて。テーブルに突っ伏していたオレは、ドキリとして起き上がる。 すると見上げたその先に。 心配そうに見つめてくる緑柱石の瞳とぶつかった。 「戻ってからずっと、休む間も無かっただろう?なかなか会えなかったから、心配していたんだ。」 「オレは全然っ、平気だったよ…。」 ホントは寂しかった。 せっかく遠征を終えて戻って来れたのに。 まさかこんな忙しくなるなんて…予想外だったからさ。 そりゃオレが魔王であるジークと、勝手な約束しちゃったから…なんだけど。 本音を飲み込み、へらりと取り繕ってたら。 ルーは優しく頭を撫でてきて。 「私は…セツに会いたくて、仕方なかったよ。」 「ッ…!…お、オレだって…」 みんなの談笑に紛れ、互いが聞こえるくらいの声で話す。 人目があるから、あまり感情的にはなれなかったけれど…。ルーの目が、ほんのり熱っぽく…オレを映してくるから。 オレの理性も段々と、抑えが効かなくなってしまいそうだ…。 「セツ、も…?」 寂しかったか?…と耳元で低く囁かれ。 掛かる吐息にゾクリと身体が震える。 声が出せず、うんと大きく頷けば…嬉しげに笑うルーの吐息が聞こえてきた。 けれど次にはまた、真剣そうな声音に変わり… 「本当に、疲れてはいないのか?」 今夜は早く休んだ方が良いのでは…そう、心配を口にしながら。ルーはどっち付かずな物言いをするものだから。 「疲れてないよ…まだ、起きてられるし…」 オレの気持ちに気付いてよって。 本心は口に出せないまま、目だけで切に訴えていたら… 「そうか…なら────」 ルーの顔が更に耳元へと近付けられ、 唇が、僅かに触れる。 (今夜…セツの部屋に行くから…) 待っていてくれ────…そうルーは熱く囁いて。 ゆっくりと、離れていった。 「っ…………」 目が合い、じっと見つめていると…沈黙を応と捉えてくれたルーが、悪戯に微笑み。 瞬間、ぶわりと全身、熱を帯びてしまうから。 「おっ…オレ、先に部屋に戻るねっ…!」 「え~セツ、もういっちゃうの~?」 ガタンと椅子を揺らし立ち上がったオレを、 ロロが名残惜しそうに引き留めようとしたけど… 「ダメだよロロ。セツも働き詰めで、疲れているんだからさ。」 「そうですよ。今夜くらいは、ゆっくりさせてあげましょう。ね?」 アシュとヴィンが気遣って、ロロを上手く(なだ)めてくれたので。 (ありがと、ふたりとも…) 彼らのことだ、きっと色々察してくれてんだろうな…。 オレは心の中でお礼を述べながら、おやすみなさいとみんなにひと言告げると…ルーの視線を意識しながら、いそいそと食堂を後にした。

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