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④
「ルー、お疲れ様~!ほら、早く座りなよ。」
ロロに手招きされ、ルーがちらりとオレを見てから隣の席へと腰を下ろすと。
「セツ…なんだか久し振りだな。」
「うんっ…ルーも、元気してた?」
「ああ…私なら、このとおりだ。」
声を聞いただけで、ドキドキしてしまい。
返事も少し上擦っちゃったし…。
「少し窶 れたな…ちゃんと眠れていたか?」
もう随分慣れたはずなのに。
前触れも無く頬に触れられ…大袈裟なくらい、ビクンと身体が跳ね上がる。
気付いているのかは判らないけど…
そんなオレを認めたルーは、一瞬目を細めたかと思うと…。
触れる頬を僅かに撫でるようにして、その手を離していった。
「ルーも飲んだらどうだい?ようやく落ち着いたんだしさ、少しくらい羽目を外しても構わないだろう?」
「そうだな…なら、少しだけ。」
それからは他愛ない話をしつつ、食事を楽しみ…
ルーはアシュに勧められるまま、お酒を嗜んだりと。いつも通りの光景に収まったところで。
なんだろう…オレひとりが意識し過ぎなのかな…
拍子抜け、というのが本音なわけで。
ちょっとくらい、オレのこと構ってくれたっていいのにさ…アシュと仲良く話し込んじゃってるもんだから。
つい嫉妬しちゃう自分が情けなくて。
気分転換のつもりで…
「オレも今日くらいは、お酒飲んじゃおっかな~。」
なんて投げやりに溢したら、そういうとこだけはちゃんと聞かれてたようで…。
何故かルーだけでなく、みんなからも全力で阻止されてしまった。
自棄酒 も許されず、気分もすっかり沈んじゃったものだから。まだ早いけど、もう部屋に引き籠っちゃおうかなぁとか、独りモヤモヤしていたら…
「セツ…どうした?元気がないな…。」
「あっ…ルー…」
いつの間にやら、隣の席に戻って来ていたルーに声を掛けられて。テーブルに突っ伏していたオレは、ドキリとして起き上がる。
すると見上げたその先に。
心配そうに見つめてくる緑柱石の瞳とぶつかった。
「戻ってからずっと、休む間も無かっただろう?なかなか会えなかったから、心配していたんだ。」
「オレは全然っ、平気だったよ…。」
ホントは寂しかった。
せっかく遠征を終えて戻って来れたのに。
まさかこんな忙しくなるなんて…予想外だったからさ。
そりゃオレが魔王であるジークと、勝手な約束しちゃったから…なんだけど。
本音を飲み込み、へらりと取り繕ってたら。
ルーは優しく頭を撫でてきて。
「私は…セツに会いたくて、仕方なかったよ。」
「ッ…!…お、オレだって…」
みんなの談笑に紛れ、互いが聞こえるくらいの声で話す。
人目があるから、あまり感情的にはなれなかったけれど…。ルーの目が、ほんのり熱っぽく…オレを映してくるから。
オレの理性も段々と、抑えが効かなくなってしまいそうだ…。
「セツ、も…?」
寂しかったか?…と耳元で低く囁かれ。
掛かる吐息にゾクリと身体が震える。
声が出せず、うんと大きく頷けば…嬉しげに笑うルーの吐息が聞こえてきた。
けれど次にはまた、真剣そうな声音に変わり…
「本当に、疲れてはいないのか?」
今夜は早く休んだ方が良いのでは…そう、心配を口にしながら。ルーはどっち付かずな物言いをするものだから。
「疲れてないよ…まだ、起きてられるし…」
オレの気持ちに気付いてよって。
本心は口に出せないまま、目だけで切に訴えていたら…
「そうか…なら────」
ルーの顔が更に耳元へと近付けられ、
唇が、僅かに触れる。
(今夜…セツの部屋に行くから…)
待っていてくれ────…そうルーは熱く囁いて。
ゆっくりと、離れていった。
「っ…………」
目が合い、じっと見つめていると…沈黙を応と捉えてくれたルーが、悪戯に微笑み。
瞬間、ぶわりと全身、熱を帯びてしまうから。
「おっ…オレ、先に部屋に戻るねっ…!」
「え~セツ、もういっちゃうの~?」
ガタンと椅子を揺らし立ち上がったオレを、
ロロが名残惜しそうに引き留めようとしたけど…
「ダメだよロロ。セツも働き詰めで、疲れているんだからさ。」
「そうですよ。今夜くらいは、ゆっくりさせてあげましょう。ね?」
アシュとヴィンが気遣って、ロロを上手く宥 めてくれたので。
(ありがと、ふたりとも…)
彼らのことだ、きっと色々察してくれてんだろうな…。
オレは心の中でお礼を述べながら、おやすみなさいとみんなにひと言告げると…ルーの視線を意識しながら、いそいそと食堂を後にした。
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