415 / 423

「なるべくオレも、自分で出来ることはしたいんだけどね…。ティコにはさ、上の子の守護を…お願いしたいんだ。」 「え、僕が…!?でも─────…」 僕は孤児院の出だし…と、 つい卑屈なことを口走ってしまったが… 「だからこそ、だよ。ティコはずっと小さい子のお世話をしてきたんだしさ。こんなこと頼めるのも、ティコしかいないんだよ?」 セツが身分なんて気にするような人ではないから。 僕の不安なんか、その笑顔で一瞬にして…吹き飛ばしてくれる。 「えっと、でもさ…セツの上の子って、確か女の子だったよね…」 まだ幼いとは思うけど。僕だって一応男だし…そういう意味では、不向きだし。 親としては気にならないんだろうか?…と、慎重にもなるのだが。やっぱりセツは、あっけらかんとしていて。 「へーきへーき。むしろティコなら、すぐ懐いてくれるだろうし…ねっ、ルー?」 「ん?…ああ──まあ、そうだな…」 ニコニコと、ルーファス様にまで同意を求めてたけど。こちらの反応に至っては、なんだか曖昧なものだった。 …本当に大丈夫なのかな? 「とりあえず産後の育児が、落ち着くまでの間だから…最低でも2年くらいは、お願いしたいとは思ってるんだけど。その間は団を離れて、ここで過ごしてもらいたいから…無理強いはしないよ?それでも、」 ダメかなって、僕を見上げてくるセツは。 自覚も無しに僕の心を揺さぶり。 居たたまれず、ルーファス様を盗み見たら… 同情するよう苦笑されてしまった。 解るよ、ルーファス様…僕だってしょっちゅう誑かされてるし。セツがこんなだと、気が気じゃないよね。 そうはいってもセツは…ずっとずっと、ルーファス様に夢中だから。 そんな心配は要らないんだけど。 「僕で良ければ…喜んで。」 大丈夫。これは決して下心なんかじゃない。 世界を救ってくれた神子が、僕みたいな一介の新米騎士を…頼ってくれているのだから。 応えてみせなきゃ、男が廃るだろって… これはジーナさんからの受け売りなんだけど。 「ありがと、ティコ!無理言っちゃってゴメンな~。」 「ティコ、少々お転婆ではあるが…娘のこと、宜しく頼む。」 セツとルーファス様は揃って微笑み。 律儀にも頭を下げてくるから。 まるで絵画でも見てるかのように、 本当に綺麗で、お似合いなふたりだなぁと…心から思った。 「あ…どうせなら、娘さんにも挨拶しておきたいんだけど…。」 最後に神子屋敷に来たのが、2年程前だったし。 その時はまだ、2つか3つくらいだったと思うから…また更に成長してるはず。 さすがに僕のことも、覚えてはいないだろう。

ともだちにシェアしよう!