416 / 423
④
「オレもそう思ってさ、ちょうど庭で遊ばせてたから…」
セツと一緒に、キョロキョロと辺りを見渡せば…
遠くで元気に駆け回っている、小さな女の子の姿が目に留まり。
「あ…セイラ!こっちにおいで~!」
セツが手招きして呼ぶと女の子は。
ウキウキとしながら、此方へと駆けて来た。
「ママ~、パパ~!」
(わあ…セツにそっくり!…髪色は、やっぱりルーファス様のだな…)
溢れんばかりの笑顔を湛えながらやって来る少女は。
ふわふわと蒼い髪を靡かせ、手を振り返しながら。
トコトコと走ってはいたけれど…
「ひゃあっ…!」
セツ達に気を取られるあまり、地に足を引っ掻けてしまい。
「おっと…」
僕は素早く駆け寄ると、小さな身体を片手で優しく抱き止めた。
リボンで纏めた濃い蒼髪が舞い、陽の光を受け煌めく。
「大丈夫?もう~、セイラはホントに危なっかしいなぁ~。」
「そういったところは、セツに似ているからな。」
セツとルーファス様も急いでやって来て。
腕の中の少女…セイラも、モゾモゾと顔を上げる。
「あっ…」
「平気?足とか、挫いたりしてないかい?」
僕を見るなり固まってしまうものだから…。
慌ててセイラを立たせ、手を離してあげるのだけど。少女は茫然としたまま、一切反応がなく…。
殆ど初対面みたいなものだからなぁ。
いきなり触れられて、驚かせちゃったのかもしれない。
「セイラ、助けて貰ったのだろう?」
お礼は?…と、ルーファス様が父親らしく、黙ったまんまの娘を優しく促す。
するとセイラはハッと我に返ると僕を見上げ。
ゆっくりと口を開いた。
「あっ、ありがとう…。あなた、名前は?もしかして騎士さま?わたしはね、セイラ!」
「うん。騎士といっても、まだまだ新米だけどね。名前はティコ。よろしくね、セイラ。」
「てぃこ…ティコ…うん、よろしくね!」
爛々と目を輝かせ、捲し立てるセイラに。
怖がらせないよう、僕も笑顔でゆっくりと返したら。
セイラは更に満面の笑顔を綻ばせて…
傍目のセツは、呆れたように溜め息を吐く。
「我が娘ながら…メンクイに育っちゃったねぇ…。」
そう溢し、セツはルーファス様の顔をじぃっと見上げるけど。当の本人には、全く自覚が無いらしく。
「前はヴィンやジーナと結婚したいと騒いでたしな。ロロやアシュにも懐いて…そういえばオリバー殿にも、交際を申し込んでいたらしいし…。」
その名だたるや、美形揃いの守護騎士勢に加え…
今や元帥にまで躍進した、第一騎士団の元団長だったオリバー様という顔ぶれ。
加えて父親はこのルーファス様であり…
魔王との一騎打ちにて、その名を轟かせたフェレスティナの英雄にして。類い稀なる美貌の持ち主なのだから…セツが言いたいことも、解るような気がした。
その中に、セツも入ってると…僕は思うけどなぁ。
ともだちにシェアしよう!