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「オレもそう思ってさ、ちょうど庭で遊ばせてたから…」 セツと一緒に、キョロキョロと辺りを見渡せば… 遠くで元気に駆け回っている、小さな女の子の姿が目に留まり。 「あ…セイラ!こっちにおいで~!」 セツが手招きして呼ぶと女の子は。 ウキウキとしながら、此方へと駆けて来た。 「ママ~、パパ~!」 (わあ…セツにそっくり!…髪色は、やっぱりルーファス様のだな…) 溢れんばかりの笑顔を湛えながらやって来る少女は。 ふわふわと蒼い髪を靡かせ、手を振り返しながら。 トコトコと走ってはいたけれど… 「ひゃあっ…!」 セツ達に気を取られるあまり、地に足を引っ掻けてしまい。 「おっと…」 僕は素早く駆け寄ると、小さな身体を片手で優しく抱き止めた。 リボンで纏めた濃い蒼髪が舞い、陽の光を受け煌めく。 「大丈夫?もう~、セイラはホントに危なっかしいなぁ~。」 「そういったところは、セツに似ているからな。」 セツとルーファス様も急いでやって来て。 腕の中の少女…セイラも、モゾモゾと顔を上げる。 「あっ…」 「平気?足とか、挫いたりしてないかい?」 僕を見るなり固まってしまうものだから…。 慌ててセイラを立たせ、手を離してあげるのだけど。少女は茫然としたまま、一切反応がなく…。 殆ど初対面みたいなものだからなぁ。 いきなり触れられて、驚かせちゃったのかもしれない。 「セイラ、助けて貰ったのだろう?」 お礼は?…と、ルーファス様が父親らしく、黙ったまんまの娘を優しく促す。 するとセイラはハッと我に返ると僕を見上げ。 ゆっくりと口を開いた。 「あっ、ありがとう…。あなた、名前は?もしかして騎士さま?わたしはね、セイラ!」 「うん。騎士といっても、まだまだ新米だけどね。名前はティコ。よろしくね、セイラ。」 「てぃこ…ティコ…うん、よろしくね!」 爛々と目を輝かせ、捲し立てるセイラに。 怖がらせないよう、僕も笑顔でゆっくりと返したら。 セイラは更に満面の笑顔を綻ばせて… 傍目のセツは、呆れたように溜め息を吐く。 「我が娘ながら…メンクイに育っちゃったねぇ…。」 そう溢し、セツはルーファス様の顔をじぃっと見上げるけど。当の本人には、全く自覚が無いらしく。 「前はヴィンやジーナと結婚したいと騒いでたしな。ロロやアシュにも懐いて…そういえばオリバー殿にも、交際を申し込んでいたらしいし…。」 その名だたるや、美形揃いの守護騎士勢に加え… 今や元帥にまで躍進した、第一騎士団の元団長だったオリバー様という顔ぶれ。 加えて父親はこのルーファス様であり… 魔王との一騎打ちにて、その名を轟かせたフェレスティナの英雄にして。類い稀なる美貌の持ち主なのだから…セツが言いたいことも、解るような気がした。 その中に、セツも入ってると…僕は思うけどなぁ。

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