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⑤
「セイラ、ママのお腹に赤ちゃんがいるでしょ?」
「うん!」
セツはゆっくりとした動作で膝を付き、セイラと目線を合わせ手を握ると。優しい声音で話し始めて。
「それでね…ルイの時みたいに、お腹がおっきくなっちゃったらさ。今みたいにセイラともあまり遊べなくなるかもしれないんだ。」
だからねと一呼吸置いてから、セツは微笑んで。
「ティコにね…セイラのこと守って貰えるように、お願いしたんだよ。」
ひと言ひと言、幼い我が子に伝わるように。
目を見つめながら話すセツ。
その様はもうすっかりと、お母さんの顔をしてて。
強く温かな眼差しが…とても輝いて見えた。
「ティコが、わたしの…?」
「そうだよ、セイラ。僕がキミを守護するからね。」
セツに習って身を屈ませ、にこりと微笑んでみせると。
「わたしの、守護騎士さま…パパと、ママみたいに…?」
「うん。セイラ、僕をキミのナイトにしてくれるかな?」
僕は笑顔のままセイラの手を取り、小さなお姫様に許しを請う。
するとセイラは、ルーファス様と同じ色をした瞳をいっぱいに見開いて。
「いーよ!じゃあ今からティコは、わたしの守護騎士さまね!」
「ふふ、ありがとう。」
まるでごっこ遊びでもするかのように。
僕の願いを叶えてくれたから。
礼に習い、僕は騎士の誓いを…
その小さな手の甲へと落としてみせた。
「お~い、セツ~!」
そこへ屋敷の正門から手を振る人物がふたり、此方へとやって来て。
「ジーナ、ロロ!おかえり~!」
「ただいまセツ~、ちょうどそこでジーナと鉢合わせちゃってさ。」
その人物とは、先程話にも出ていた守護騎士のジーナさんとロロさんであり…。
出会った頃はまだ、そんな年も違わなかったから…
孤児院でもよく遊んでくれてたし、年上のお兄ちゃんって感じだったんだけど。
「お、ティコじゃんか~!まぁたでっかくなりやがって、元気にしてたか~?」
「うん。ジーナさんも騎士団の方を手伝ってるんでしょ?大変じゃない?」
成人も過ぎて、更に逞しくなったジーナさんは今。
ロロさんやアシュさんも同様に、守護騎士の任はそのままで騎士団の仕事にも携わるようになり。
後輩騎士の稽古を付けてくれたり、遠征にも積極的に参加してくれたりもしていて…。
騎士団の間でも、頼れる兄貴分として親われていた。
「結界もセツが、あっという間に全部直しちまったからなぁ。暇をもて余してたし…むしろ物足りねぇくらいだよ。」
答えてジーナさんは、ニカッと白い八重歯を覗かせる。
すごく気さくな人だから…新米騎士にも分け隔てなく。嫌な顔ひとつせず、相手してくれるんだよね。
「セツは動いて平気なの?まだ安静にしてなきゃダメなんじゃない?」
それから、セツの手を取り。
物憂げな表情を浮かべ心配するのは…ロロさんで。
昔は女の子と間違えそうなくらい、
華奢で愛らしい容姿を、してたんだけど…。
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