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「セイラ、ママのお腹に赤ちゃんがいるでしょ?」 「うん!」 セツはゆっくりとした動作で膝を付き、セイラと目線を合わせ手を握ると。優しい声音で話し始めて。 「それでね…ルイの時みたいに、お腹がおっきくなっちゃったらさ。今みたいにセイラともあまり遊べなくなるかもしれないんだ。」 だからねと一呼吸置いてから、セツは微笑んで。 「ティコにね…セイラのこと守って貰えるように、お願いしたんだよ。」 ひと言ひと言、幼い我が子に伝わるように。 目を見つめながら話すセツ。 その様はもうすっかりと、お母さんの顔をしてて。 強く温かな眼差しが…とても輝いて見えた。 「ティコが、わたしの…?」 「そうだよ、セイラ。僕がキミを守護するからね。」 セツに習って身を屈ませ、にこりと微笑んでみせると。 「わたしの、守護騎士さま…パパと、ママみたいに…?」 「うん。セイラ、僕をキミのナイトにしてくれるかな?」 僕は笑顔のままセイラの手を取り、小さなお姫様に許しを請う。 するとセイラは、ルーファス様と同じ色をした瞳をいっぱいに見開いて。 「いーよ!じゃあ今からティコは、わたしの守護騎士さまね!」 「ふふ、ありがとう。」 まるでごっこ遊びでもするかのように。 僕の願いを叶えてくれたから。 礼に習い、僕は騎士の誓いを… その小さな手の甲へと落としてみせた。 「お~い、セツ~!」 そこへ屋敷の正門から手を振る人物がふたり、此方へとやって来て。 「ジーナ、ロロ!おかえり~!」 「ただいまセツ~、ちょうどそこでジーナと鉢合わせちゃってさ。」 その人物とは、先程話にも出ていた守護騎士のジーナさんとロロさんであり…。 出会った頃はまだ、そんな年も違わなかったから… 孤児院でもよく遊んでくれてたし、年上のお兄ちゃんって感じだったんだけど。 「お、ティコじゃんか~!まぁたでっかくなりやがって、元気にしてたか~?」 「うん。ジーナさんも騎士団の方を手伝ってるんでしょ?大変じゃない?」 成人も過ぎて、更に逞しくなったジーナさんは今。 ロロさんやアシュさんも同様に、守護騎士の任はそのままで騎士団の仕事にも携わるようになり。 後輩騎士の稽古を付けてくれたり、遠征にも積極的に参加してくれたりもしていて…。 騎士団の間でも、頼れる兄貴分として親われていた。 「結界もセツが、あっという間に全部直しちまったからなぁ。暇をもて余してたし…むしろ物足りねぇくらいだよ。」 答えてジーナさんは、ニカッと白い八重歯を覗かせる。 すごく気さくな人だから…新米騎士にも分け隔てなく。嫌な顔ひとつせず、相手してくれるんだよね。 「セツは動いて平気なの?まだ安静にしてなきゃダメなんじゃない?」 それから、セツの手を取り。 物憂げな表情を浮かべ心配するのは…ロロさんで。 昔は女の子と間違えそうなくらい、 華奢で愛らしい容姿を、してたんだけど…。

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