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⑥
「大丈夫だよ~。今日は体調も良かったし、セイラやルイも外に出してあげなきゃ可哀想だからね。」
「なら僕が代わりを引き受けるから。セツは自分の身体を大事にして。…ね?」
両手できゅっと、セツの手を包み込むロロさんは。
今じゃセツどころか、ジーナさんの身長も追い越してしまい。中性的な美貌はあれど、体格もすっかり男らしくなっていたし。
何より…
「ロロ…何かと理由を付けて、セツに触れようとするんじゃない。」
「ええ~良いじゃない。僕だってセツの騎士なんだからさぁ。ルーばかり独り占めだなんて、不公平でしょ?」
「あ~…まぁた始まったよ…。」
ジーナさんが頭を抱えるのも無理はない。
何故なら大人になったロロさんの中身は、まるで以前のアシュレイさんみたいに軟派な性格へと成長してしまい…。
男女問わず…色々と噂が絶えず飛び交い、様々な異名まで轟かせるまでになってたりするから。
…勿論、騎士として術者としての才能は優秀だから。この人もジーナさん同様、憧れの存在ではあるんだけど…。
セツに対して気安いというか…って、僕も子どもの頃はそれに託つけてキス…とか、まあしちゃったこともあったから。あんまり言えた口でも、ないんだけどね。
色恋沙汰に対し、ちょっとだらしないところは…
如何なものかなぁとは思う。
やはり騎士たるもの、剣術や魔法の実力も勿論だけど。内面は清廉潔白で、正義感溢れ…誰にでも分け隔てなく、手を差し伸べられるようなさ。
となれば理想のど真ん中をいく、ルーファス様とか。あとは…
「ご無沙汰しております、セツ殿。」
「オリバーさん!それに秘書のリシェルさんも!」
そうそう、まさにこのお方。
文武両道に加え容姿も完璧。なのにそれを鼻に掛けるでもなく、人柄は誠実そのもの。
現在は元帥として、頂から騎士団を支えていて。
そんなオリバー様こそ…誰もが掲げる、理想の騎士像ではないだろうか。
「忙しいのに誘ったりして、ごめんなさい。」
「いえいえ…セツ殿のご懐妊の祝いを期に、皆が集まると聞いたものですから。」
そう告げるオリバー様は、それとなくセツの身体を労りながら。そつなく爽やかに花束を差し出す。
確か年齢は四十手前だったはずだけど…。
その容姿も鍛え抜かれた身体も、団を退いた今も全く衰えた様子もなく…。
寧ろ年齢を重ねるごとに、大人の色気や気品に磨きがかかり。魅力が増してるんだから…
やっぱり憧れだよなぁ。
僕が所属する第一部隊の、元団長だしね。
副団長のカナタさんとジルさん、それにシロエさんからもオリバー様の武勇伝をよく聞かされていたけど。
僕も一度でいいから遠征なんかでご一緒してさ。
生でオリバー様の勇姿を、この目で拝んでみたかったなって思ったよ。
ただ、ひとつだけ不思議なのは…こんなに素敵なお方なのに、一度も浮いた話を聞いたことがなくて…。
「セツ殿、お気を煩わせてしまい、申し訳ありません。私までお誘い頂きまして…」
因みにリシェルさんと呼ばれた人は、元帥となられたオリバー様の専属秘書官だそうで。
知的な眼鏡姿が印象的な、とても綺麗な人で。
黒よりの濃紺の髪色とか雰囲気が、なんとなく昔のセツに似てる気もするけど…
勿論、男の人である。
「そんな今更みずくさいですよ、リシェルさん~。」
なんだか意味深に、うふふと笑って。
パシパシとリシェルさんの腕を叩くセツに。
何故かオリバー様が、照れ臭そうに苦笑を浮かべてはいたけど…。
う~ん…やっぱりオリバー様ほどのお人が、伴侶どころか恋人の影すら無いだなんて。
まさにフェレスティナ最大の謎…なんだよなぁ。
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