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第23話 ヤキモチ

 そうか。  これがヤキモチか、と気付いていなかった自分がなんだかおかしくなる。  俺、そんなに柳さんが好きだったんだ。  やっぱり、ぼーっとしてるかもしれない。    うん。頑張ろう。  好きなんだから、頑張ってみればいい。  ぎりぎりまで腰を浮かせて、思い切って奥までずぶっと腰を沈めてみる。  痺れるほどの快感に、声を上げてしまう。   「雪ちゃん、そんなにしたら、イってしまう」 「柳さん、気持ち、いいっ?」    少しずつ慣れて、しがみつきながら腰を振ると、柳がうっとうめき声を上げた。   「雪ちゃん……ゴムしてへんで。中に出してしまってもええんか?」 「いい……柳さんの、俺の中に出して」 「雪ちゃん……」    ぶわっと身体の中で、柳のモノが一段と膨張した。  余裕なさげに柳は息を乱し始める。  上で動かれると調節ができないのか、息をつめて耐えている様子が色っぽい。   「柳さんっ、すごい、気持ちいいっ」 「アカン、雪ちゃんっ、イきそうや」 「柳さん、イって。気持ちよくなって」    雪本は夢中で腰を動かした。   「雪ちゃん、キスしてくれるか」    切なく甘い息を乱している柳に口づけて、雪本は思いきり舌を差し入れた。  音を立てて舌を絡ませていると、柳は雪本の腰を抱えて、下から強く突き上げるように放出する。  ドクン、と身体の中で柳が弾けたリアルな感触に、雪本は身体を震わせた。   「あ、ああっ、イクっ!」    雪本が悲鳴を上げたので、柳は雪本のモノをぐちゃぐちゃに扱きながら、さらに数回突き上げてやる。  びくん、びくんと、魚のように痙攣しながら、雪本も勢いよく体液を放った。  ぜいぜいと息を乱して、抱き合ってキスをする。   「俺が先にイってしもた」    柳は照れたように、それでも幸せそうに、雪本をぎゅっと抱きしめた。   「すごいご褒美やったなあ……こんな気持ちええのん、初めてやわ」 「ほんと?」 「雪ちゃんにキスされながら、搾り取られて、夢見てるみたいやったわ。それに……」 「それに……?」 「中で出したんも、初めてや」    柳がめずらしく、照れている。  雪本も『中で出して』と思わず口走ってしまったのを思い出して、照れた。  なんであんな恥ずかしいセリフを言えてしまったんだろう、と思う。   「雪ちゃん、ちょっと抜くで」    雪本が腰を浮かせると、ずるり、と柳のモノが引き抜かれた。   「ちょっと我慢してや」    代わりに指を二本突っ込まれて、雪本はひっ、と変な声を上げてしまう。   「奥の方に出してしもたから、掻き出しとかんとな」    中で指を少し曲げて、掻き出すような動きに、悲鳴を上げてしまいそうになる。   「やっ、柳さんっ、それ、や、あっ」 「ちょっと我慢して。出してしまわんと」    ぐりぐりと中で粘膜を擦られるようで、雪本は柳の首にしがみついてこらえてみるが、どんどん快感が広がってしまう。  気持ちいい場所を指が通り過ぎるたびに、びくん、と身体が勝手に跳ねてしまう。   「柳さん……」    うるんだ目で、雪本は我慢できずに訴える。   「イってもいい……?」    甘えるような雪本の声に、柳は破顔する。   「ええよ。指でイってみ?」    柳は笑いながら、今度は快感を与えるための指の動きで、雪本を追い詰める。  ぐちゅぐちゅと思いきり指を出し入れしながら、指先を確実に急所に擦りつけてやる。  ピンポイントの刺激は、むき出しの神経を擦るように強烈な快感になって、雪本を襲う。   「あ、あ、あ、イクっ……」    びくん、びくん、と指を締め付けながら、雪本は柳にしがみつく。   「可愛いな……ホンマ可愛い。俺の指でもっとイって」    雪本はそのまま何度も指でイかされた。  柳は器用に指先だけで雪本をイかせるコツを覚えてしまったようである。   「あっ、あんっ、もっと……キスしながら、擦って、あああん」 「ほら、もう一回イってみ。ちゃんと、顔見せて」 「ひ、ああっ……またっ……」    セックスとは違い、その快楽には終わりがない。  いやらしく執拗に指を出し入れされながら、雪本はぽろぽろ涙をこぼして、嫌というほど絶頂へ連れていかれた。   「ねえ……柳さん、俺、わかんないんだけど……身体の相性ってあると思う?」    ぐったりしながら、雪本が思い出したように問いかける。  何を急に言い出すのか、と柳は苦笑した。  どうせまた、佐野あたりからつまらないことを吹き込まれたんだろう、と思う。   「あるかもしれへんな。あるとしたら、雪ちゃんと俺は最高やけど」 「ほんとにそう思う?」 「俺は、雪ちゃんみたいに俺の指だけで何回もイってくれる男は、他に知らへんからな」 「そんな理由……」    照れてぷっとふくれた雪本を柳は抱き上げる。   「どんだけ相性いいか、今からまた教えたるわ。覚悟しいや」    柳は更に身体の相性を証明すべく、雪本をベッドへと運んだ。    野村は、しばらくして、一度だけまた会社に姿を現した。  たまたま柳と雪本が一緒に帰社したタイミングだったのだが、柳はさすがに野村のしつこさにキレた。   「お前、俺の同僚に、誰が恋人やって聞いたそうやな」 「聞いたけど……真一郎に似合うような男じゃなかったよ」    野村がちらり、と雪本に視線を向けたので、柳の怒りは爆発した。   「お前、自分のやってること、わかってるんか? そうやって、どんだけ人を傷つけたら気が済むんや。俺がゲイやという噂になって、会社におられへんようになったらええとでも思ってるんか?」 「そんなつもりじゃ……」 「そんなつもりじゃなかったら、人を傷つけてもええんか? 俺は、もうお前に振り回されるのはうんざりや。二度とその顔、俺の前に出すな!」 「真一郎……」 「馴れ馴れしく呼ぶな。俺をそう呼んでええのは、恋人と友達だけや!」    吐き捨てるような柳の罵声に、野村は驚き、目をうるませて走り去った。  少しだけ、可哀想だな、と雪本は胸が痛んだ。  あんな男でも、本気で柳のことを好きだったのかもしれない。  心配そうに少し離れたところで見守っていた雪本のところへ、柳は笑顔で戻ってきた。   「ごめんな。嫌な思いさせて」 「俺は別に」 「心配せんでええからな」 「大丈夫。俺、柳さんを渡す気ないですから」 「おっ、雪ちゃん、ちょっと強くなったやんか」    柳は嬉しそうに目を細めて笑った。  それから、雪本の耳元に口を寄せて小声で囁いた。  『愛してるで、雪ちゃん』  (番外編 ~Fin.~)  

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