6 / 121

―終りを告げる今日―

「1…2…3…4…5…6…7…8…9…」  そこで10数えると瞳をあけて両手を離した。 「今だ!」  俺は死への直前の恐怖を自分の中で受け入れてその覚悟を決めた…――。  ガシャン!  その瞬間、俺の近くでフェンスが大きく揺れる音が突如聞こえた。 「…チッ、何だよ先約かよ?」  その声に思わず声がする方を見た。男子生徒はフェンスに両手を無造作に鷲掴みして、少し凭れる格好で下にいた。俺は慌てて体勢を戻すと咄嗟にフェンスを掴んだ。男子生徒が俺の近くで一言呟いた。 「何だよ飛ぶんだろ? 俺に気にせず、早く飛べよ――」  彼はそう言って話すとフェンス越しから、遥か街並みの情景を一人静かに眺めていた…――。

ともだちにシェアしよう!