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―終りを告げる今日―
「1…2…3…4…5…6…7…8…9…」
そこで10数えると瞳をあけて両手を離した。
「今だ!」
俺は死への直前の恐怖を自分の中で受け入れてその覚悟を決めた…――。
ガシャン!
その瞬間、俺の近くでフェンスが大きく揺れる音が突如聞こえた。
「…チッ、何だよ先約かよ?」
その声に思わず声がする方を見た。男子生徒はフェンスに両手を無造作に鷲掴みして、少し凭れる格好で下にいた。俺は慌てて体勢を戻すと咄嗟にフェンスを掴んだ。男子生徒が俺の近くで一言呟いた。
「何だよ飛ぶんだろ? 俺に気にせず、早く飛べよ――」
彼はそう言って話すとフェンス越しから、遥か街並みの情景を一人静かに眺めていた…――。
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