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―終りを告げる今日―

「どうした? 大丈夫かよ、お前?」  彼は不思議そうに言ってきた。俺は地面に自分の両手をついた状態で上を見上げた。 「ああ、だいじょ…――!?」  その瞬間あの幻覚が完全に目覚めて、俺の中で 突如牙を向いた。目の前にいた男子生徒の姿に、あの『幻影』が重なった。それを見て唖然となり言葉を失った。そして、俺の中で閉ざしたはずの忌わしい記憶を呼び起こした。頭の中をその記憶が支配すると、異常な程の強い衝動に俺はその場で無意識に駆り立てられた。それと同時に自分の両手があの『感覚』に僅かに震えた。  突然のことに混乱すると心無しか沈んだ表情で黙ってジッと見つめた。そこに居る彼は今の俺にとっては違う姿の人物に見えた。姿と形があの『幻影』に静かに重なった――。  目眩がする頭を抑えながらも、其処から静かに無言のまま立ち上がった。 そこからは自分でも、まったく覚えていないが。俺は彼を見て『アレ』と重なった姿に酷く嫌悪感と、不快感と、底知れない苛立ちに強く駆り立てられた。フラフラした足取りで彼に近づくと真っ直ぐな目で相手に言い放った。 『お前なんでいるんだよ…――?』  その言葉は寧ろ彼に向けた言葉ではなく。俺は男子生徒に突如重なったあの『幻覚』に対して、口走った。込み上がってくる言いしれぬ感情に、刹那的苛立ちが自分を支配した。そして歯止めが効かずに自分をとうとう見失いだした。彼は俺の異変に動じずにただ其処に立って見ていた。  見えない何かに身体が突き動かされると自分の両手をスッと伸ばして彼の細い首に手を掛けた。そして、無言で彼の首を両手で絞めた。

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