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―虚無の嵐―
『畜生っ!!』
急に頭の中で苛立ちが頂点に達した。そして、無意識にあの男の言葉が脳裏に浮かんだ。
「じゃあな、死に損ない」
その言葉が頭の中を何度も漂っては、リピートを繰り返した。 皮肉混じりに言われたあの言葉が、余計に俺の中を分けも解らずムシャクシャに駆り立てさせた。
「何だアイツは!? 一体アイツ何なんだよ!」
俺の中で苛立ちはもはや頂点に達していた。死ぬって決めた時に、二週間前から自分で死への覚悟を決めていた。それなのに、その計画をいきなり現れたアイツにあの日、邪魔されて。あと少しで死への境界線の向こうに行けたはずなのに――。
…………。
俺の中で憤りの思いが色々と駆け巡った。 そしてアイツのお陰で死ぬ覚悟も一気に消え失せた。
クソッ、どうしてくれるんだ!
心の中でアイツの事を深く罵った。
『畜生っ!!』
バン!
どうしようもない憤りに、目の前にあった木を力任せに思いきり拳で叩いた。気持ちが荒ぶると、俺はそれを静めようと、近くにあったブランコに黙って座った。
キィキィっとブランコが揺れ動くと、鈍い金属音をたてながら鳴らした。 日はすっかり落ちていて気がつけば空は暗くなり。空に月が昇っていた。
俺は月を見ながらブランコを漕いだ。青い月に照らされて染まった公園には一人だけのブランコの揺れる音が虚しく響き渡った。
冷たい風が頬を掠め、風は木枯らしを吹かせながら地面にある落ち葉を巻き上げた。誰もいない公園は静けさが漂っていた。
暫くボンヤリしていると、何処からかピアノの音が聞こえた。その曲は何処かとても懐かしく、何処かで聴いた事があるクラシックの曲だった。
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