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―虚無の嵐―

「鳥の巣が一昨日の台風で下に落ちたから一応、作ったんだ。巣がないとここに住み着いている鳥が帰って来た時に巣が無かったら困ると思ってさ……」  隣で話すと祖母はニコッと笑い。いきなり俺の頭を撫でて来た。 「偉い、偉い! 貴也君、偉いわよ!」  祖母はそう言ってさらに頭を撫でてきた。 「さ、触るなよ……! 俺、アンタの『子供』じゃねーし!」 俺がそう言うと祖母はハッとした。思わず口から出た言葉に、自分でもしまったと感じた。だが、そのまま謝らずに黙り込んだ。 「ごめんなさいね貴也君…。でも、鳥の巣箱作ってあげるなんて貴方は優しいわよ」  彼女はそう言って優しく笑うと、ニコニコしながら部屋の中に戻った。祖母は部屋のドアを開けると不意に言った。 「貴也君、朝ご飯出来てるから制服に着替えたら早く下に降りてきなさい」 祖母はそう言って部屋から出て行った。 俺は一人ベランダに佇み。巣箱を確認した。中を覗くと、鳥は二日前から帰って来なかった。それを見ると少しため息をついた。 「俺、何期待してるんだろ…――?」  心無なしか、焦燥感が胸の中を漂った。それは自分の気持ちが心無しか、乾いていくような感情だった。いつもそんな期待の後に、不意に自分の胸を襲うこの感情の波が俺は嫌だった。 「期待するのは、もうやめたはずなのに…――」  そこでポツリと呟いた。 サンダルを脱ぐと窓を閉めてカーテンを再び閉ざした。  陽の光は嫌いだった。  陽の光を見る度に憂鬱になり、いつも暗い気持ちになった。今の俺には陽の光はとても眩しく。その光はまるで俺の中にある『罪悪感』を明るみの下で照らすようで、俺はそれが怖くて。明るい日差しからいつも遠ざかっていた。 俺にとって好きな空は夕焼けだった。 夕焼け空は一日の終わりを教えてくれる。そして全てが夕日の中に沈んで溶け込む。俺はその瞬間が好きだった…――。

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