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―虚無の嵐―

 今踏み出したら完全に死ねるかもな。 交差点は朝から忙しく、車が何台も行き交っていた。 俺はぼんやりとしながらその事を考えていた。周りにいた人数は少なかった。 横断歩道に立ち止まっていたのは、ほんの数人程度だった。  今ならなんとなく出来る気がした。そう思っていると、脳裏にあの言葉が突如、蘇った。 『死に損ない』  俺の頭の中で再びあの言葉が蘇った。 『死に損ない』  何故か再び頭の中で聞こえてきた。俺は周囲を気にせず言い返した。 「うるさい、黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!」 『死に損ない』 「黙れ黙れ黙れ! お前に俺の一体、何がわかる!」  持っているスクールバックを地面に落とすと、其処に居るはずもない相手に向かって、怒鳴って喚いた。 「お前があの時、俺を生かしたんだろ…――!? どうしてあの時『邪魔』をしたんだ、答えろ!」 そこで堪らず、取り乱したように大きく叫んだ。 「ああ、クソっ! 畜生っつ!!」  強く歯軋りをしながら、憤りは自分の中で頂点に達していた。目の前を通過している車を見るとアイツのあの言葉が再び脳裏に蘇った。 『俺だったら周りに人がいても構わずに飛ぶけどな――』  その瞬間、自分の中で何かが弾けた。 それは、吹っ切れた感覚に近い衝動だった。 …………みてろよ。  

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