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―虚無の嵐―

――ここからは、一体何が起こったのかは自分でもわからない。 ただ言えることは、車が何かにぶつかる音と、車のブレーキの音。辺りにいた人々の何かを叫ぶ声と悲鳴だった。そして、視界を覆うような赤い真っ赤な画面。  俺は地面に倒れると思った。  あぁ、これでやっと死ねる……。  辺りにいたギャラリーは、慌てて救急車を呼ぶ者もいれば。目の前の人身事故を前に泣き叫ぶ者もいた。そして、仕切りに動画撮影をする者や、興味本位に寄って集って写真を撮ろうとする者達も出た。意識が遠退くとどこからか、サイレンの音が聞こえてきた。周囲は騒然としていた。  それもそうだ。  何せ俺がたった今、飛び込んだんだからな。  俺が地面に流血して倒れていると、鞄を持った男性が声をかけてきた。 「あの、大丈夫ですか……?」  うるせー、ほっとけよ!  俺は頭の中でそう呟いた。しかし、男性は何度もしつこく肩を叩いて呼び掛けてきた。 『ほっとけよ、黙って死なせろっ!!』 「えっ……!?」 男性が俺に驚くとそこで唖然となった。そして、近くで救急車が停まると中から慌ただしく救急隊員が降りてきた。そして、救急隊員は持っているトランシーバーで連絡を取った。 「男性1名重傷、年齢は50代前後、会社員」  その言葉に突如、地面から起き上がった。 『なんだって……!?』  起き上がると咄嗟に辺りを見渡した。すると、俺の近くに会社員の男性らしき人物が、凄い血を流して地面に倒れていた。 周りは、俺じゃなく。 流血して倒れている男性に目を向けていた。そのことに俺は愕然とした――。 「そんな、嘘だろ……?」

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