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―虚無の嵐―

男は不意打ちのように突如、曲がり角をいきなり曲がった。俺は目の前の男を見失いそうになり、一気にそこで走り込んだ。 普段はこんなに必死に走る事もないのに、何故か今は必死に走っている自分がいた。 それはある意味不思議な感覚だった。しかし、男は軽快な足取りで素早く角を曲がった。 俺は走りながら思わず、ハッとなって叫んだ。 『畜生っ!!』  いきなり撒かれると慌てて角を曲がった。だがそこには、男の姿が無かった。いくら辺りを見渡しても、あの男は一向に見当たらなかった。息を切らしながら汗をかいた。 「ッ、ハァハァハァ……! 何て足の早い奴だ!」 見間違いじゃない限り恐らくあの男はアイツだ。しかしあの男を見つけた途端に逃げられた。自分の中で憤りはピークに達した。 『クソッ!!』 苛立ちを隠せないでいると誰かが近くで笑った。 「――無様だな、やっぱりその程度かよ?」 その声に反応すると咄嗟に振り返った。振り向くとそこには帽子をかぶった男がいた。俺は唖然となりながらもやはり奴だと確信した。相手の素顔は帽子で隠れていてハッキリと見えないが、やはりアイツだった。 俺はその場で思わず息を呑んで沈黙した。あの日屋上で出会ったアイツに再び出会う事が出来た。一瞬、何て言おうか迷った。 すると奴はクスッと笑うと再び走り出した。 『テメェ、待ちやがれ……!』  男が再び走り出すと自分も走って追いかけた。すると俺の方を振り向くとそこで皮肉を言った。

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