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―虚無の嵐―
「さっきは見事な撃沈ぶりだったな。また死に損なったのかよ、死に損ない」
俺に向かって振り向くと、あざ笑いながら街の中を疾走した。そこでカッとなって言い返した。
『テメーふざけるなっ!!』
「あははははっ!」
男は笑うと再び前を見て真っ直ぐ走った。俺はそこで悔しくなると、どうにかして相手を捕まえたい衝動に強く駆られた。
「前も死に損なったよなぁ。ホント懲りねーな、お前」
『うるせぇ、誰のせいだと思ってんだテメー!』
カッとなると走りながら怒鳴った。男は可笑しそうに、其処で笑っていた。ますます剥きになると本気で相手を追いかけた。
見てろよ、絶対に捕まえてやるっ!!
自分の中で今までないくらい、本気で思いっきり走った。風を切りながら力強く走ると、近くまで一気に追いついた。
「おいおい、何だよ急にマジになって!」
男は余裕で笑いながら前を走っていた。俺はしめたと思い、一瞬の隙をつくと近くにあったゴミ箱を蹴っ飛ばして相手の道を塞いだ。一瞬の出来事に足を取られて躓くと、男はそのまま地面に倒れかけた。
『うわっ…!』
その瞬間、相手の腕を咄嗟に掴んだ。
逃がしてたまるか――!
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