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―虚無の嵐―
急に殺されかけて、カッとなって言い返そうとした。 しかしさっきの出来事で頭が完全に真っ白になってしまいなかなか言葉が出てこなかった。そこで一旦、気持ちを落ち着かせると相手に向かって怒鳴った。
『テメー、いきなり何するんだ!?』
そう言って激怒すると、いま直ぐ飛びかかって殴りたい衝動に駆られた。いくらなんでもフザケ半分でも度が過ぎる。
俺はあと少しで車に轢かれる所だった。余りにも行き過ぎた悪ふざけに怒りが頂点に達した。その場で立ち上がると掴みかかって殴ろうとした。だが、男は見てあざ笑うと軽々と避けた。そして、バスの方に走るとそのまま飛び乗って乗車した。その場でうっかり奴を取り逃がした。しかも、急いで追いかけようとしてもバスは既に動きだしていて追いかける体力も残ってなかった。
『クソっ!!』
男を目の前で取り逃し、悔しくなって言葉を吐き捨てた。バスはドンドンと遠ざかって行き、俺はアイツにまんまと逃げられた。すると遠く離れるバスの方から奴の声が聞こえた。
『おい! また死に損なったな、死に損ない!』
その言葉に頭がカッとなった。
『テメー、今度こそは絶対に捕まえてやる!! 覚えとけよ!?』
そう言って憎たらしいあの生意気な男に宣戦布告を告げた。奴は俺の話しを聞いたか分からないがそのままバスと一緒に何処に消えた。
『畜生っ!!』
散々コケにされたあげく。今度はアイツの手で俺はたった今、死にかけた。こんなフザけた屈辱的な事があっていいのか?
得体の知れないあの男に対して、苛立ちから歯軋りをした。 そこで苛立ってるとさっきの車の運転手が救急車を呼ぶか慌てて聞いてきた。俺はその人を無視して黙ってその場から立ち去った。
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