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―虚無の嵐―

数日の朝、俺はいつもと変わらず重たい足どりで学校に登校した。 眩しい日差しと太陽が、頭上にジリジリと照らつくと真上で明るく輝いていた。俺はそんな空を見ると不意にため息が出た。 秋風が頬をヒヤリと掠めて通り抜けた。俺はこの前の事が頭からなかなか離れなかった。それに、脳裏にこびりつくようなアイツとの悪夢のような悪い記憶。出来たら夢であって欲しいと思った。しかしあの事を思い出すと妙に腹ただしかった。 「くそ、よりによってアイツとキスかよ…――!」  そこで再び思い出すと腹の中がムカムカした。しかも俺はアイツに殺されかけた。いくら何でもそんなの冗談じゃない。悪ふざけにも程がある。苛立ちを隠すように、肩に掛けたスクールバックを片手で強く握り絞めた。 「ちくしょう……!」  その場で声に出して呟いた。空を見上げると、鳥は青空を羽ばたいていた。手を伸ばしたら届きそうな空は遥か高く、今の俺にはあの青空さえも眩しかった。俺もあの鳥のように空を自由に羽ばたいて何処か遠くに行けたらいいのに……。 何も知らない鳥は、ただ飛ぶことしか知らない。そこに柵や未練や大切なものも失う怖さも、鳥は知らないのだから…――。 俺はその事を思ったら急にむなしくなった。下を向いて歩くとあの交差点の前に辿り着いた。あの人身事故は、あれはやはり会社員の自殺だった。一昨日のニュース番組で、あの日の事故をテレビは淡々と報道していた。  たった二分間の報道であの年配の男性の死は、ただの自殺と片付けられた。長年勤めていた会社にリストラされて。年相応に雇ってくれる会社もな無く、それを苦にして自殺したらしい。  人間はそんなものなのか?  たった二分間の報道で、その人の人生の一体、何がわかるのか――?  その人に家族は?   親戚は?   妻や子供はいたのだろうか……? あの時、男性は何を思って死んだかさえもたった二分間の報道で一体その人の何がわかるんだ?  俺は心無しか、その事を思ったら強い焦燥感に かられた。

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