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―深海の魚―

――風が靡く白いカーテンを二人は首に赤いリボンを巻いて床に寝そべって静かに眺めた。  窓の外は綺麗な夕陽色に染まっていた。秋風を肌で感じながら、胤夢は隣で目を瞑っていた。色白で綺麗な顔立ちの横顔をふと眺めながら成田は話した。 「あーあ。何か季節が過ぎるのもあっと言うまだね。こないだまで春、いや夏だったのにさ。今はもう、すっかり秋だよ。このままだと、冬になりそう」 「――何だよ、気が早い奴だな。季節なんか、直ぐに変わる。そしたら直ぐに春だ」 「でもさぁ。11月になったら、僕も胤夢と同い年になるよ」 「なんだよ、不満か?」 彼が聞き返すと彼は少し、むくれた顔を見せた。 「いやだよ〜、一つ年っちゃうじゃん! 僕このまま若い15歳のままでいたい!」 「プッ、わがままな奴――」  その言葉を聞くと胤夢は急に笑った。 「あっ、ちょっと笑わないでよ……! 僕こう見えても真剣に話してるんだよ?」 「人は必ず年をとる。避けようがない」 「分かってるよ〜。でもさぁ……」 「でも?」 「僕、大人になりたくない。このままずっと子供でいたい。君だってそいだろ?」 「……どーかな」 「僕は絶対に嫌! だって大人になったらきっと良い事ないよ、今の大人達なんか皆汚いじゃん! 僕、そんな大人になりたくない……!」 急に声を荒げると成田は怒って身体を起こした。その隣で彼は静かに話した。 「――確かにお前の言う通り、大人は『汚い』。俺達子供を良いように『利用』する。俺だってそんなのはごめんだ」 「……ほらぁ、君だって同じじゃん。大人になったら良い事ないよ、年もとるし。髭だって生えるし頭の髪も薄くなっていくよ。顔のシワも増えるし綺麗な肌もパサパサになる。声だって!」 「それが大人になる『通過点』なら仕方ないだろ?」 「でっ、でもぉ…――!」  彼の言葉に成田は悲しそうな顔で体育座りして顔を伏せて落ち込んだ。  

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