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―傷跡とナイフ―
その日の夜、俺は風呂場で湯船に浸かりながら自傷行為 をした。
一時はその衝動が治まっていたが、不意に風呂場に置いてあったカミソリを見たら、衝動的にまたしてしました。
暫くやって無かったから、古傷の上に更に上書きする形で傷口をまた開いてしまった。湯船の中でボーッとしながら、天井を見上げて呆けた。
腕から流れたままの血の臭いを嗅いで、不意に舌先でペロッと舐めた。
鉄の苦い味が口の中に広がる。そして、俺はその血を見ながら『なんだ。まだ出来るじゃん』と、呟いた――。
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