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―傷跡とナイフ―
――あてもなく彷徨って気がついたら、夜になっていた。都会の明るいネオンが立ち並ぶ街角で一人歩道橋の上でボンヤリとした。下には沢山の車が走っていた。まるで光の洪水だ。ずっと見ていると下に引き込まそうな気分だった。何となく此処から飛び降りて、死ねるような気がした。
一瞬、手摺りの上に乗って両手を広げて飛び降りてやろうとした。きっと、身体はグチャグチャになって車に轢かれまくるんだろうと思った。
まず、即死は間違いないだろう。
飛び降りてまだ生きてたら悲惨だ。
だから飛び降りる時のタイミングが重要だと感じた。
「――ハッ。馬鹿か……」
一瞬、妄想の中で自分が死ぬのをシュミレーションした。俺はいつでも考えている。自分がどう『死ぬ』かを。
学校帰りに成田と遊んで、さっき別れた。あいつは本当に変わった奴だ。こんな俺なんかと一緒につるむなんてどうかしてる。
きっと変わり者が好きな変人だ。そうでなきゃ、ただのお人好しだ――。
着ている制服のジャケットから、携帯の着信が突然、鳴った。音で誰からだと直ぐに分かった。でも電話には出ずにメールも見なかった。そこで頬杖をついてため息をついた。
「ああ、何処でもいい。何処か遠くに消えたい」
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