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―傷跡とナイフ―

「君ってキス上手いね。誰に教わったの?」 「別に良いだろそんなこと。それよりも、もっと俺に夢中になってよ。ホラ、ここなんか段々と硬くなってきてる」  そう言って彼の下半身を下着の上から触った。急に男が息を荒くさせると、胤夢は近くにあったタオルを手に彼の目元を覆った。 「次は目隠しプレイしようか?」 「それは駄目だよ。君の綺麗な裸が見れないじゃないか?」 「シャワーの後で裸を沢山見せてあげるよ。それに、焦らされた方が面白いでしょ?」 「うーん、でもなぁ……」 「大丈夫。シャワーを浴びたら直ぐに出てくる。それに後でいっぱい良い事しよう」  甘い誘惑の言葉に男は乗っかると、目をタオルで縛って、下半身を露出したままベッドに横たわった。胤夢は彼に『じゃあ、入って来る』と言うとシャワー室の扉を閉めた。 中から水の音が流れたまま、男は暫く待たされた。そして、一向に中から出て来ない彼に外から不意に話しかけた。 「まだかかるのかい? もうそろそろ良いんじゃないのかな? ねぇ、君!」 声をかけても返事は無かった。男を急に焦って、両手のベルトを外そうとした。だが、キツく縛られていたのでなかなか外れ無かった。 『クソっ、やられた!!』 思わず心の声を口走ると彼は慌てた。そこにいきなり誰かが扉をノックする音が聞こえた。 「警察だ! この扉を開けなさい!」 「はっ!? け、警察……!?」  急に緊迫感が押し寄せた。警察官は、扉を無理やり開けて中に入ってきた。 「ここで児童買春罪の行為があったと、フロントから通報があった!」 「なっ、そんなの知りませんよ!?」 「嘘をつくな、フロントにいた管理人が学生服を着た未成年の少年から、泣きながら助けを求められたと聞いた! 緊急だが、お前を逮捕する!」 『まっ、待って下さいよ~っ!!』  男は自分の身の潔白を証明するが、あからさま下半身を露出したままいたので、言い逃れは利かなかった。そして、彼はそのまま警察官に現行犯逮捕された。  

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