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―傷跡とナイフ―

「アハハハハッ!」  男が現行犯逮捕されてホテルの前でパトカーに乗って行く姿を野次馬の中。遠目から眺めると、可笑しそうに笑ってお腹を抱えるとその場から離れた。 少年は巧みな話術と妖艶な色香で、一人の大人の男性を誘惑し唆すと、最後は破滅へと導いた。  うちに秘めた狂気を時放つように、彼は満月の下で狂ったように笑った。そして、ふと我に返ると正気に戻った。 「――っと、バカだぜ。あんなんで簡単に騙される奴が悪い。やっぱり汚い連中は救われないなぁ。ホントどうしようもないぜ、大人は……」 不意にそう呟くと彼は立ち止まって満月をジッと眺めた。そして何かを思い出したようにポケットから携帯を取り出すとメールを開いて中身を確認した。そこで疲れた溜め息をつくと、彼は重たい足取りで家へと帰った。  

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