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―傷跡とナイフ―

「きみには分かるかい、黒嵜君。これこそが完璧な『美』そのものだと。神話にでるヒアキントスの少年のように美しく。絵画や石像のヘンリク・ルボミルスキのように絶世で壮麗な美しい目鼻の顔立ち。その輝かしい美しさは生きた彫刻と呼ばれたビョルン・アンドレセンのようではないか。これ程までに完璧な美を持つ人間がこの世にいるだろうか?」 彼は心酔しきったように話すと我が子の手を取り瞳を閉じて頬擦りした。その光景に黒嵜は、息を呑むと思わず頷いた。 「……た、確かにこれ程まで美しい顔を持った少年はなかなかいないかも知れません」 「当然だ。これを神からの贈り物と奇跡としか、言いようがない。なあ、そうだろ胤夢?」 「父さん、もう良いだろ――」 胤夢は一言話すと、手を振り払って膝の上に隠すように乗せた。 「おや。嫌われてしまったようだ。このくらいの年頃になると扱いが難しくってね。昔は父さんっ子だったのに、あの頃が一番可愛いかった。勿論今でも十分くらいにさ」 そう言って話すとテーブルの下から、人差し指で手の甲を人無でした。その瞬間、胤夢は身体が ゾクッとした。 「さあ、黒嵜君。そろそろ帰りたまえ。今から、息子と楽しい食事をするんだ。君がそこにいたらいつまでも食べれないだろ?」 彼は一言話すと、片手に持っているワイングラスを一気に飲み干した。黒嵜は返事をすると自分の鞄を持ってそそくさと帰る支度をした。 「では園咲先生、個展会場の日取り場所が決まり次第にお電話させて頂きます。今日はお疲れ様でした!」 彼は深々とお辞儀をすると帰って行った。食堂で二人きりになると父は話した。  

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