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惹かれ合うさき……
昼休みに羽柴と二人で屋上に行った。そして、焼きそばパンを食べながら、フェンス越しに空をボンヤリとして見ていた。少し冷たい風を肌で感じながら秋の季節に浸った。
羽柴は俺が貸したノートを忙しそうに書き写していた。そして、大きな声で『できた!』と言うと笑いながら話しかけてきた。
「マジでサンキュー、これで助かったわ!」
「そうか良かったな。じゃあ、次は無いからな。あとお前、授業サボり過ぎ。ちゃんと出ないから毎回こうなるんだろ?」
「ううっ、痛い所突くよなお前って……」
「当然だろ。普通は他人にノートなんか、簡単に見せてはくれないぞ。俺がたまたま隣の席に居ただけ有り難く思え」
そこで一言説教臭く言うと、呆れた顔で後ろを振り返った。すると羽柴はニコニコしながら傍に来ると、いきなり大袈裟に抱きついてきた。
「相葉、お前って本当に良い奴だ! これぞ持つべきものは友だな!」
「いきなり抱きつくな鬱陶しい!」
「お前って無口で無愛想な顔してるけど根は良い奴だよな。面倒見も良いしさ。お前だけはうちに居る冷たいクラスの連中とは違うと思ったんだよ。それに優しいしさ!」
そう言って自分の鼻を指先で擦ると、少し照れた顔でハニカンできた。調子の良い事を言ってきた羽柴に拍子抜けすると、ふと溜め息をついて言い返した。
「……無口で無愛想は余計だろ。はっきり言って、こっちは迷惑してるんだからな。またノートを貸せとか俺に言うなよ」
「おう、任せとけ!」
「お前って本当にお調子者だよな……」
そこで呆れると抱きつかれた手を振り払って、傍を離れた。そして、食べかけの焼きそばパンを頬張った。
「――ほら、俺ってお前と同じでクラスで浮いてるじゃん。それにお前っていつも一人でいるしさ。だから何となく話しやすい気がして……」
「は……? お前と一緒にするなよ、俺は一人が『好き』だから一人で居るんだ。お前みたいに、お調子者過ぎて、周りにハブられたワケじゃないんだ。勘違いするな」
自分が思った事をストレートに言うと、羽柴は首を傾げてケラケラと笑った。
「……何がおかしい?」
「ごめんごめん、だって一人が『好き』って何かおかしいじゃん。普通は誰だって一人は嫌なものだろ?」
その言葉に口を閉じて黙ると背中を向けた。
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