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惹かれ合うさき……

「なあ、この弁当本当に貰っていいのか? 後で返せとか言わないよな?」 そう言って羽柴は地面に座ると、俺があげた弁当の包みを広げて食べようとした。 「――ああ、別に構わない。食べろよ。俺、お前に貰った焼きそばパンとカレーパンあるし……」 「すげー美味そうじゃん。ホントに食べて良いのか?」 「いいって、食べろよ」 「サンキュー、じゃあいただきまーす♪」 羽柴は俺があげた弁当を美味しそうに食べてた。俺はそれを見ながらカレーパンを一口食べた。 「味付けが少し濃いけど、この卵焼き美味いな。これお前が作ったのか?」  そう言って聞いてくると一言答えた。 「……いや、俺じゃない。うちのばあちゃんが作った」 「ばあちゃん? お前、母ちゃんは?」  羽柴は口に箸を咥えながら、不思議そうに俺に聞いてきた。 「いない。だから祖父母と一緒に住んでる…――」  正直に話すと羽柴は気まずい顔をして話した。 「……悪い、今の俺がいけなかったな。そっかぁ、お前のばあちゃん料理が上手だな! うちの母ちゃんは弁当とか余り作ってくれないからさ。いつも買って食べてるから、なんかこう言うの羨ましいな」 そう言って口いっぱいに弁当を掻き込むとムシャムシャしながら食べた。羽柴から意外な話を聞かされると一言呟いた。 「お前も見かけによらず苦労してるんだな。また今度パンと交換で食べさせてやるよ」 「いいのか? でも、これはお前の為にばあちゃんが作った弁当だろ?」 「いいんだ。俺、そう言うの苦手なんだよ」 「苦手? お前って変なやつ…――」 「別にいいだろ。じゃあ、また今度交換な」 「おう!」  そこで羽柴と約束を交わすと、そろそろ教室に戻ろうとした。すると、俺達の方に二人組の女子生徒が来た。 「ねぇ、相葉君!」 「何――?」  いきなり名前を呼ばれると後ろを振り返った。二人組の女子生徒は俺の方に近寄るとそこでヒソヒソと小声で話していた。 「ほら、茉優《まゆ》!」 「やっぱり無理だって朋子〜!」 「何言ってるのよ今がチャンスじゃない。ほら、早く言わないとかお昼休みが終わるよ!」 「で、でも……!」 ポニーテールの女子は背中を押されると俺の前でモジモジしながら顔を赤らめていた。友人らしき女子生徒が急かすと恥ずかしそうに口をモゴモゴした。 「何?」 彼女達に呼び止められた俺は、不思議そうに再び聞き返した。   

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