「あ、あの……！　これ受け取って下さい…――！」 　ポニーテールの女子生徒が震える手で、手紙らしき物を渡してきた。そして、彼女は自分の顔を真っ赤にしながら気持ちを伝えてきた。 「す、好きです……！　いつも登下校の時に、バス停で貴方をずっと見てました！　私の気持ちです読んで下さい…――！」 彼女は勇気を振り絞って告白してきた。いきなり唐突に云われると俺は唖然となって黙った。そして、彼女から手渡された手紙を一度も読む事も無く。そのまま突き返した。 「……ごめん、悪いけど――」 その一言に彼女は悲しそうな顔をすると、瞳から涙をポロポロ流して泣いた。 「そ、そうですよね。いきなりこんなことを急に言われたら驚きますよね、ごめんなさい……！」 そう言って彼女は涙を拭くと、俺の前から足早に立ち去った。最後に見た傷ついた顔が印象的だった。そのあとを女子生徒の友人が慌てて追いかけた。 「ちょっと待ってよ茉優…――！」 そこで二人組の女子生徒達がいなくなると、羽柴は驚いた顔で一言呟いた。 「え、今の１年B組の沙原茉優《さはらまゆ》じゃん。お前あんな可愛い子の告白あっさり断るか？　しかも速攻かよ。せめて手紙くらい見てから断れば良いじゃん」 「うるさい、お前には関係無いだろ……！」 「俺だったら絶対付き合うのにもったいね。後で後悔しても遅いぞ？」 「誰がするかよ。お前と一緒にするな――」 　不機嫌な顔で言い返すとそのまま屋上を出て、非常階段を降りながら教室に戻ろうとした。