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惹かれ合うさき……
「――ごめん、いきなり取り乱して……」
「いいんだよ。僕には分かるよ、君の気持ち」
そう言って成田は優しく話した。俺は隣で涙を拭くと『ああ』と言って返事をした。川沿いの橋から離れると、夕陽が沈む中を手を繋ぎながら黙って歩いた。そして、分かれ道の前で成田は急に立ち止まって突然聞いてきた。
「ねぇ、本当に行くの? その、二人だけで……。行かない方が良いんじゃないかな」
「成田……」
「だってまた…――!」
「良いんだ。わかってる。ありがとな……」
心配するアイツの頭をポンポンと撫でるとそこで自分から別れた。
「自分が《《決めた》》事だから。だから俺は逃げない――」
「胤夢君……」
「澄春《すばる》、俺と友達でいてくれてありがとな……!」
俺には似合わず後ろを振り返って手を振った。成田は一瞬、驚いた顔をすると手を大きく振り返した。
「僕も胤夢君と友達で良かったよ、またね!」
そこで二人で手を振ると別れた。
アイツは本当に良い奴だ。
俺がどんな人間か分かってそれでも『友達』でいてくれる。
きっと他人なら俺に嫌悪感を抱くに違いない。実の父親と人には言えない歪んだ関係だなんて――。
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