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惹かれ合うさき……
彼らは豪華なフルコースを味わうように堪能し。フォアグラのポワレを食べ終わった頃に、胤夢はナイフとフォークをお皿の上に置き。テーブルの下に隠した誕生日プレゼントを手に持つと、それをぎこちない顔で父に渡した。
「――父さん、これ……」
そう言って渡すと、目を反らして顔を下に俯かせた。照れ臭そうにしている息子を見て、父は喜んだ様子でプレゼントを受け取った。
「おお、私にか? 有難う胤夢。父さんは嬉しいよ」
彼は息子からプレゼントを貰うと、喜びながら箱の中身を開けてみた。
「良いネクタイじゃないか、それに、品もあってセンスがいい。父さんは気に入ったよ」
目の前で嬉しそに話すと、胤夢は父の顔を見ながら『喜んで貰えて良かった』と呟いた。
「どうだい黒嵜君、私に似合うと思うか?」
「はい、凄くお似合いですよ先生! 今日はお誕生日おめでとうございます!」
箱からネクタイを手に取ると胸元に当てて見せた。彼が自慢気に聞くと、黒嵜は拍手をしながら褒めた。そして、千尋も隣で拍手をしながら誕生日を祝った。
その温かな光景はまるで絵本のようだった。一つのテーブルに家族全員が仲良く揃って、誰かの誕生日を一緒になって祝う。そんなお伽話みたいに見えた。
その危うい脆さは、浜辺に作り上げられた砂の城のように儚く。一瞬の幸せのような一時だった。胤夢はその光景を見ながら彼らと共に、父の誕生日を心から祝ったのだった――。
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