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第7話―愛の迷路―
――京王プラザホテルのプレミアグラン、スイートの部屋に父の姿があった。彼は雑誌記者の女性とカメラマンの男性をと共に、記事でのインタビューに応じていた。
彼は高級スーツのブランド服に身を包み。全身から優雅な品と、凛々しい顔立ちに似合うような爽やかな大人の香りが漂った。雑誌記者の女性は彼の姿と魅力に少し頬を赤く染めながらインタビューを続けた。
「今園咲先生、今日は私達の記事のインタビューに応じて頂き感謝します! 普段から仕事でお忙しい中、日本と世界を股に掛けてアートでご活躍されている所をこうして快く引き受けて下さり。我々、『芸術の塔』の雑誌編集部一同も誠に栄です!」
雑誌記者の女性が丁寧に挨拶をすると、彼はソファに座ったままの姿勢で優雅に足を組むと笑って応えた。
「そんな事は無いです。あなた達、芸術の塔には日頃からお世話になっています。ですので、いつでも雑誌のインタビューには私もお答えします。どうぞお構いなく何でも質問して下さい。もちろん、話せる範囲で良ければですが…――」
彼は堂々と話すと首元のネクタイに指先で触れた。雑誌記者の女性はメモした内容の手帳を開くとそれを確認してから話した。
「今回ですが芸術の塔の雑誌において、園咲渓人先生の特集記事を組んで載せようと思っております。あとインタビューと実際に絵を描かれている制作風景などの写真も何枚か撮らせて頂きます。それは後日、先生のアトリエでと考えております。ですので今日はインタビューをメインに対談等を交えて話しを進めさせて頂きますので、今日は何卒よろしくお願いします!」
彼女は緊張した表情で渓人に向かって話した。それを近くで見ていた彼は、気遣うように優しい言葉を掛けた。
「それは既にこちらも承知ですので問題ありません。そんなに緊張なさらずに、力を抜いてリラックスして下さい。そうだ。良ければ下に専用のクラブラウンジがあるので、其処でお酒を一杯飲んでからお話しでもしましょうか?」
彼の誘いに雑誌記者の女性は焦りながら答えた。
「す、すみません……! 余りにも緊張してしまって逆にお気遣いをさせてしまって申し訳ないです!」
「気にする事はない。君の緊張もよく分かる。どんな相手も自分の前にいきなり大物がいたら、自然と緊張するものさ。何せ私は現代アートにおいて、美術業界では名が大きく知れ渡っているからね。私を知らない者はまず居ないさ。君だってそうだろ?」
そう言って笑いながら話すと彼女に目を向けた。男らしく堂々と自慢気に自分の事を話す彼を見て、雑誌記者の女性は納得すると思わず共感した。
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