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偶然は必然!? 3

「すみません。そこ、俺の席なんですが……」 ハッとして顔を上げると、小奇麗な顔をした青年が困ったようにこちらを見ていた。 透き通るような白い肌に色素の薄い茶色い瞳。さらりとした前髪は頬のあたりまで伸びて、それを耳にかけて後ろへ流している。スラリとした細身の身体つきではあるが、しっかりと筋肉がついていることが服の上からもわかる。と言うか、何よりも……。 なんだろう? 紺色のジャケットに黒いパンツを合わせただけのラフな格好にも関わらず、青年の持つ雰囲気なのか、そこはかとなくエロティックな雰囲気がある。 「あの……?」 声をかけられて我に返る。どうやら考え事をしていたせいで返事をするタイミングを逃してしまっていたようだ。 「あ、あぁすまない。僕の席は隣だったみたいだね。すぐに退くよ」 「なんだ、隣の席だったんならいいですよ。荷物動かすの大変でしょう?」 そういうなり彼はクス、っと笑って、手に持っていたリュックを頭上の棚に仕舞って蓮の隣の席にストンと腰を降ろした。 「なんかすみません」 「大丈夫です。どうしても窓側が良かったわけじゃないし……」 そう言ってもらえるとなんだか安心する。取り敢えず苦手な人種じゃなくて良かった。 ホッと胸を撫で下ろしていると、不意に彼が身を乗り出して覗き込んできた。 「ところで……お兄さんってゲイなんですか?」 単刀直入に尋ねられぎくりと身体が強張った。何と返事をするのが正解なのだろう? 困惑し、数秒の沈黙が二人の間に流れる。 「あはっ、なんでわかったんだって顔してる。ごめんね、さっきそのスマホの画面チラッと見えちゃって……」 頬にかかる髪を耳に掛けながら膝に置いていた手に彼の手が重ねられ、ドキリとする。 「……実は、俺もゲイなんだよね」 内緒話でもするような仕草で、耳元に生暖かい吐息と共に囁かれ、ゾクッとした感覚が背中を走った。 驚いて顔を上げると、目前に綺麗な顔が迫っていて、思わずゴクリと喉が鳴る。 「そのアプリ、ジャガイモみたいな男しかいないでしょう? そんなので探すくらいならさ、……いっそ俺とマッチングしてみない?」 するりと指を絡め取られ、今にも唇が触れてしまいそうな距離で囁かれる。唇が擦れ息を吹き込まれるようなリアルさに一気に鼓動が激しくなった。

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