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偶然は必然!? 10

外に出ると既に陽は高く上り、空を真っ青に染め上げていた。10月半ばの空気はひんやりとしていて、火照った身体を心地良く冷やしてくれる。 「あ~あ。いい所だったのに」 「仕方ないだろ。もう昼過ぎなんだし」 早朝のまだ薄暗い時間帯に梅田に着いて、それからホテルに直行したのだから、かなりの時間滞在していたことに今更ながら驚く。 おかげですっかり予定が狂ってしまった。まぁ元々当ての無い旅なのだから、特に問題は無いのだが。 「そう言えば、お兄さんって何してる人なの?」 朝から何も食べていなかった為、近くにあるお好み焼き屋に入り一緒に昼食を済ませ、食後のデザートにソフトクリームを食べながら、ふと思い出したかのように青年が尋ねて来た。 「僕? うーん……今は舞台関係の雑用係、かな」 「へぇ、意外と地味な事やってるんだ……。すっごくカッコいいからどこかの芸能事務所にでも所属してるのかと思ってた」 「まさか。そんな柄じゃないよ。それに……昔ちょっと色々あって、今は裏方に徹することに決めてるんだ」 「ふぅん? なんか訳ありっぽいね」 カッコいいのに勿体ないなぁ。なんてボヤキながらソフトクリームを口に運ぶ青年を頬杖をついて眺める。 (訳有りと言えば、コイツも十分ワケアリそうだけど) 見た目こそ普通に見えるものの、彼は明らかに一般人ではない雰囲気を持っていた。 整った容姿に、モデルのようなスタイル。それにこの物怖じしない態度。恐らく、普通の大学生ではないだろう事は容易に想像がつく。 もしかしたら、芸能人かもしれない。 だとしたら、何故そんな人間が一人旅をしているのかは謎だが。

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